コマツといえば世界で1、2を争う建設機械のメーカー。年初に「専門家に聞く今年期待できる株式銘柄」でコマツの声が圧倒的に多く、日本の製造業の中でも大いに注目されている会社です。
そのコマツ、14日の日経によるとその収益の3割を部品で稼ぐというのです。部品売り上げだけで3800億円を超え、その利益率は25%にも及ぶというのですから会社にとっては実に心強い部門だと思います。
世の中、収益構造という点では本体よりそのメンテや消耗品の購入による利益が高いのはどこも似たような体質になっています。
例えば
パソコンプリンターのインク
自動車の定期点検に伴う修理代
建設会社の設計変更
携帯電話の契約
100円パソコン
…
つまりその会社の主力商品は激しいシェア争いで利益率が下る中、いったん自社の製品を購入してもらえればその後、定期的、安定的な収益源が確保できるという仕組みです。もちろん、「純正部品」を使わないケースも多くなってきていますが、コマツや建設会社のように取引相手先が法人である場合や業種的に非純正商品があまり存在しない場合には圧倒的な強みが出てくるということでしょう。
私が建設会社に勤務していた際の実話ですが、例えばある工場建設を受注したとします。そうするとその後、何年も延々とメンテや拡張、変更、改修工事と銘打ってさまざまな仕事が舞い込んでくるのです。私が関与していたある工場の場合、すでに20年近く工事事務所を構え、一つひとつの付随工事の粗利益は20-30%ぐらい見込めるものが多かったのです。
一般的に企業の利益率が低迷している中で受注額こそ小さいもののこの利益は大きいのです。コマツの25%の利益率もそういう観点からは理にかなっているのです。
ということはビジネスにおいて一度取り込んだお客様からいかに継続的にお金を頂戴できるビジネスを作り上げるかが重要になってきそうです。そのようなビジネスをしたいと常日頃思っていますが、例えば私が取り込んでいる例として二つ。
ひとつはマリーナ部門での電気の小売。船は停泊中にマリーナに備え付けの電源につないでいるわけですが、この電気を一定の規制範囲内で小売し、利益を上げています(20%の利益という訳にはいきませんが)。これはボートオーナーにとっては電源の選択肢がないわけですから極端な話、営業努力なしで入る付随売り上げということになります。
もうひとつは駐車場部門での管財サービスやプロパティメンテナンスサービス。もともと駐車場運営委託契約はあくまでも駐車場のビジネスに特化していますが、駐車場では日々の清掃、管理、地下駐車場ですから蛍光灯の交換などさまざまな付帯作業が発生します。これはすべて契約外ですからこれを追加作業として請けているわけです。
つまり、ひとつの商品を売り切ることで終わってしまうビジネス形態から商品を売るところから始まるビジネスに変えるということなのです。
日本の飲み屋でボトルキープというのはある意味、顧客をその店に釘付けにするという意味で実にうまくできたビジネスだと思います。残念ながらカナダではウィスキーのボトルをテーブルに置くのが禁止されていたと思いますので工夫が必要だと思いますが、このようなアイディアはさまざまな業種で応用できるのではないかと思います。
入り口は狭いけどいったん入ると中は広い、ということでしょうか。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年6月13日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。