NPOの法人登記と電子行政の不在

山田 肇

特定非営利活動促進法が改正・施行された。今までは理事全員を登記していたが、これからは理事長だけを登記すればよい。手続きが緩和されたことを歓迎したい(以下、太字は僕の感想)。しかし、問題はここから始まる。

既存のNPOは、6ヶ月以内に他の理事についての代表権喪失による変更の登記をする必要がある。この登記を怠った場合には、20万円以下の過料に処せられる。過料を避けるには、法務局に代表権を喪失する理事の一覧を記載した変更登記申請書を持参しなければならない。なぜ、そんな手続きが必要なのだろう。それは、今までは全員を「理事」として登記していたので、「理事長」が誰か法務局は特定できないからだ。

しかし、その情報はNPOを認証した所轄庁(都道府県)は知っている。所轄庁には「理事長」といった役職名を記載した役員名簿を毎年提出しているからだ。所轄庁と法務局が情報を共有すれば、登記手続きはいらないわけだ


変更登記申請書には定款を添付する。「理事長は、この法人を代表し、その業務を総理する」という代表権に関する条項があることを、法務局が確認するためだ。しかし、ちょっと待ってほしい。そもそもNPOを登記する際に法務局に定款を提出しているのだ。法務局は昔の書類を探し出す手間を省きたくて、同じ書類の再提出を要求しているのである。この「お上意識」も問題だし、書類を電子化していなかったことも問題だ

そのほかに添付する書類も法務局自身あるいは所轄庁が持っているものばかりだ。NPOでは定款や役員を変更すると法務局と所轄庁に届け出る。毎年の事業報告は所轄庁と税務署、それに都道府県税事務所に提出する。同じ書類を何カ所にも提出するのである。その手間は行政が電子化され情報連携が徹底されれば省けるものばかりだ

しかし、機を見るに敏の人々がいる。「法改正に伴う登記変更 承ります」といったパンフレットが送りつけられ、うっかり乗ってしまうと、手数料として5万円くらい取られてしまう。電子行政の不在は、そんな隙間業者の存在を許すのである

山田肇 -東洋大学経済学部-