BBCが伝える所では、Germany’s Merkel urges Greek commitment to austerity との事である。
German Chancellor Angela Merkel has urged Greek voters to elect leaders who will stick to austerity measures.
ドイツ、メルケル首相はギリシャの有権者に対し緊縮財政を採用する指導者に投票する様促した。
BBCの記事を読み、驚かされるのはユーロからの離脱を訴えているのは共産党、5月の投票獲得率9%のみで、他の政党はユーロへの残留を支持している訳である。
私はこの記事を読む迄は、今日行われるギリシャの再選挙はてっきり、ユーロ残留若しくはユーロ離脱の白黒を付けるものと思い込んでいた。
しかしながら、実際には、ユーロに残留する為には「緊縮財政採用止む無し」とする現実的な政党、New Democracy、Socialist (Pasok)を選択するのか、或いは、ドイツの言っている事等「脅し」に過ぎず、国民に不人気な「緊縮財政」を破棄しても、ギリシャがユーロから追い出される事等有り得ないとしている、Syriza他の二者択一の様相である。
早い話、後者は今迄通り贅沢な暮らしをしたい。必要な金はドイツが援助すべきと言っている様なものである。今更ながらであるが、随分と性質の悪い国をユーロに加盟させてしまったものである。
ギリシャ問題をテーマに昨年11月、イソップ物語からギリシャ問題を読み解く をアゴラに投稿してから既に半年以上が経過している。しかしながら、問題が少しも解決の方向に向かっていない。ギリシャに問題が多いのも事実であるが、他加盟国にもそれぞれの事情があり、これが解決を困難にしていると思う。
とは言え、泣いても笑っても、今日ギリシャの再選挙が行われる。就いては、結果を予想してみる。
先ず、緊縮財政を主張するNew Democracy、Socialist (Pasok)が選ばれた場合はドイツは当然として、世界の金融市場はこの結果を好感する筈である。株式市場も大きく値を上げると思う。めでたし、めでたしの大団円である。
しかしながら、ギリシャ国民に取っては緊縮財政の継続と言う厳しい運命が待ち受けている。露骨に言ってしまえば、「食えない」、「人間らしい生活が出来ない」と言う悲惨な状況である。
技術を持つエンジニア、手に職のある職人、柔軟性のある若者は「職」のあるドイツに移住し新たな可能性に挑戦する筈である。ギリシャに残るものは、「公務員」、「高齢者」、「生活保護受給者」のみの「抜け殻」状態になるであろう。
一方、「緊縮財政」破棄を主張するSyrizaの様な政党が政権奪取した場合は、少し事情が複雑だと思う。何分、国民は楽な生活を望んで、その為の手段として、「緊縮財政」破棄を支持している訳である。
所が、ドイツ国民が選挙の結果に怒り狂ったり、失望したりでギリシャをユーロから追放する様な事態となれば、望んだ楽な生活どころか、一気に復活した従来の通貨ドラクマと共に、北朝鮮レベル迄没落するかも知れない。
従って、国民には、「緊縮財政」破棄を選挙公約に掲げながら、一方ドイツには「緊縮財政」をネタにユーロ残留とそれに伴う応分の経済援助を交渉すると予測する。何の事は無い、この半年の不毛のやり取りと、ダッチロールを今後も継続すると言う事に他ならない。
半年前に、私はギリシャを冬になればひっそりと死んで行くキリギリスに例えたが、どうもこれは間違いであった様である。このキリギリス実に狡猾、したたかであり、どうも死ぬ時は世界経済も道連れにすると決めている様である。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役