大飯原発の再稼働に関してはいろいろ議論のあるところでしょうが、関西の電力不足の危機はとりあえず避けることができました。東日本大震災、福島第一原発事故による関東での電力不足、またタイを襲った洪水などの昨年の日本経済への打撃から、ようやく景気が緩やかであれ持ち直しつつある微妙な時期であるだけに、景気回復にとっては好材料となりました。景気回復については、まだまだまだら模様で、それが実感できるところとそうではないところの格差が大きい状態ですが、日銀が、15日の金融政策決定会合で、前月の「横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きが明確になりつつある」から「緩やかに持ち直しつつある」に景気判断を引き上げています。狭い範囲かもしれませんが、身の回りでもなにか景気の変化を感じます。
朝日新聞による全国の主要100社を対象に5月28日~6月8日に行った景気アンケートでも、個人消費の回復、また業績の改善をあげた企業が多数でした。
消費マインドの変化は、アパレル産業の好調が先行指標となっていたのかもしれません。とくに紳士服のアオキ、コナカ、青山商事が好決算を出していたことが目に止まりました。紳士服でなくともユニクロを除くと好調な企業が目立っています。
大西 宏のマーケティング・エッセンス : アパレルが元気になると世の中も明るくなる?逆かな? :
消費回復で顕著なのは自動車です。軽自動車を含めた登録台数の推移を見ると、昨年10月以降の回復がまるでバブル再来かと思わせる結果になっています。特に2012年3月以降は、対前年比で3月171.8%、4月193.7%、5月166.4%と昨年の震災による影響からの急回復を感じさせます。
■自動車登録台数推移(軽自動車を含む)
とくにトヨタの快進撃が目立ちます。4月と6月は、プリウスとアクアが新車登録台数で一位と二位を占め、プリウスは、対前年比で4月449.3%、5月320.3%で驚異的に伸びており、さらに新型「カローラ」の発売1カ月時点の受注台数が1万5000台となり、月販目標700台の2.1倍に達したといいます。しかも輸出も好調です。欧州や中国での販売も伸ばしているようです。ハイブリッド搭載車で13年ぶりに参戦したル・マン耐久レースは、2台が接触事故などで結局はリタイヤすることになりましたが、海外需要を取り込むのはまだまだこれからというところで、まだ伸びていく可能性を感じます。あとは、国内需要はエコカー減税効果が後押ししているので、今後は政策次第なのかもしれません。
震災と福島第一原発事故で激減した訪日外国人数も、4月の推定値では、ようやく震災前と肩を並べるところまで回復してきていることも好材料となってきます。関西は観光地を多く抱えているだけに、電気不足だとなればもろに打撃を被るところでした。
やはり、景気が回復しないと経営マインドも回復せず、体質強化のための投資も伸びません。経営マインドの好転がなければ、いくらマネーだけを供給しても、回らず、銀行に溜め込まれるだけです。しかしこういった消費回復を受け、機械受注も、化学工業や石油製品、また卸売・小売業がけん引役となり2カ月ぶりに4月5.7%増と増加したようです。
また、デジタル化やグローバル化に適応した戦略転換をはかり、それが効を奏している企業も多く見られます。おそらくまだまだ統計としてはでてこないにしても、まもなく発表される決算にも反映してくると思います。
ほんのつかの間に訪れた小さなバブルなのか、ほんとうに時代の節目を迎え、消費構造やマインド、また産業の転換が始まってきているのかは定かではありませんが、関西の電力不足による産業界へのダメージやマインドの冷え込みは、せっかく回復してきた景気に冷水をかける事態ともなってくるところでした。それが避けられたことの意味は大きいと感じます。
あとは欧州危機の影響が懸念されますが、それよりは時代変化をとらえる経営、消費マインドを呼び覚ます経営、国際競争力を高める経営の再構築を進めることの意味のほうがはるかに大きいと思います。