朝日新聞の伝える所では、米の放射線実測図、政府が放置 原発事故避難に生かさずとの事である。事は、被災民の人命に直結する。何故、速やかに公開し避難誘導に活用しなかったのか?
東京電力福島第一原子力発電所の事故直後の昨年3月17~19日、米エネルギー省が米軍機で空から放射線測定(モニタリング)を行って詳細な「汚染地図」を提供したのに、日本政府はこのデータを公表せず、住民の避難に活用していなかったことがわかった。放射性物質が大量に放出される中、北西方向に帯状に広がる高濃度地域が一目でわかるデータが死蔵され、大勢の住民が汚染地域を避難先や避難経路に選んだ。
米軍提供の「汚染地図」を見る限り、南に向かい避難すべき事が明らかである。仮に、真逆の北北西に誘導していたとすれば、情報を持ちながら、敢えて汚染地域に被災民を誘導した事になる。法的な判断は専門家に委ねるしかないが、素人目には、「刑事訴訟」の対象になるのでは? と言う気がする。
現在、野田内閣は消費税増税決着の最終段階にあるが、これは本来国民が政府を信用し、政府が国民の生命と財産を適切に守っていると確信して初めて可能になる話である。
しかしながら、この日テレの世論調査結果は極めて厳しい数字を突き付けている。野田政権自体も、野田政権が進める消費税増税も全くと言って良い程支持されていない。これでは、手練手管で与野党合意に成功しても、国民は政治に背を向けてしまう。
就いては、何をさて置いても米軍提供の「汚染地図」を無視するに至ったかの経緯、背景を国民に判り易く説明すべきである。
何度も繰り返して恐縮であるが、福島原発事故に臨み、菅前首相は信じられない位の過ちを量産した。
恣意的に停止を要請した「浜岡原発」が問題の始まりであるが、今回野田政権が大飯原発再稼働に舵を切った事で、実質的に誤りであった事が確定した。
原発廃炉なら4社債務超過 損失計4兆円超 経産省試算等は今更ながらの話で、原発の停止を継続すれば「停電」どころか電力会社の破綻は明らかである。
更に、先週のアゴラ記事、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会会議録が面白い で説明した通り、予定通り、今月末に国会事故調の正式報告書が公表されれば、流石の言い訳巧者菅前首相も進退に窮する筈である。
そして、決定打となるかも知れない、今回の米軍提供「汚染地図」の無視疑惑である。
「決められない政治」を「決める事の出来る政治」に改善する為に必要な作業は、国民の支持を取り付ける事である。
その為には、菅前政権の原発事故対応を公正、中立に検証すべきと思う。そして、国民に向かって謝罪すべき事実があれば率直に許しを乞い、改善すべき点は大胆に改善すると約束すべきと思う。
野田政権に足りないものは国民の支持である。野党との駆け引き等で場当たり的に対応しても、所詮、継続性、再現性は期待出来ず、国民期待の離反は必然である。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役