一昨日のアゴラ記事、キリギリスの運命が今日決まるで、ギリシャ再選挙が緊縮財政派の勝利に終われば世界の金融市場はこれを好感し、株式市場も大きく値を上げると予想した。
先ず、緊縮財政を主張するNew Democracy、Socialist (Pasok)が選ばれた場合はドイツは当然として、世界の金融市場はこの結果を好感する筈である。株式市場も大きく値を上げると思う。めでたし、めでたしの大団円である。
成程、昨日の東京株式市場はこれを素直に好感し、日経平均は朝から上昇し、結局151円高の8721円で終了した。正に、読み筋通りである。ユーロも円に対し値を上げたので、日本に取っては理想的な展開であった。
しかしながら、場が欧州市場に移った途端早くも変調である。朝方こそ、日本同様ギリシャの再選挙結果を好感し値を上げたものの、スペイン10年債利回りが、ユーロ導入後の最高水準となる7.303%迄上昇した事を嫌気し伸び悩んだ。
結果、終わってみれば、イギリス FT100 5491.09(+12.28) 5478.81、ドイツ DAX 6248.20(+18.79) 6229.41と、小幅上昇に留まった。
更に、ニューヨークに移ると、何と、ダウは25.35ドル安の1万2741.82ドルと、値を下げてしまった。ギリシャ再選挙結果はミニバブルの剥落どころか、市場から冷たい視線で迎えられたと言う事であろう。
冷静に考えてみれば、ギリシャの選挙結果は最悪の事態が回避されただけの事で、根本問題は何も解決していない。問題解決の為には、経済再建を基軸とした財政再建に成功する必要があるが、可能性は皆無と思う。今後共、色々と口実を付けてドイツへの支援要求を継続するに決まっている。
露骨に言ってしまえば、ギリシャ再選挙で緊縮財政派が勝利する事で、結果、財政問題が解決し、ユーロ高、円安の潮流に移行というシナリオは有り得無いと言う話である。
更に、看過出来ないのはギリシャ再選挙結果を受けて、市場の眼が早速スペイン、イタリアの債務問題に向けられた事である。これも、考えてみれば当たり前の話である。ギリシャに関係なく欧州の債務問題は日に日に重篤になっているからである。
メキシコで開催されるG20に出席する為、野田首相は昨日現地入りした。テレ朝は、これを下記伝えている。
消費税関連法案の修正合意を手土産に、野田総理大臣がG20サミットに参加するためメキシコに到着しました。野田総理は、去年11月のカンヌG20で国際公約した消費税増税について、何とか3党の修正協議をまとめて今回のG20に間に合わせました。最初のセッションで野田総理は、消費税の修正合意を手土産に、日本の財政再建に向けた取り組みをアピールする方針です。さらに、新成長戦略などを実行することで、2%を上回る経済成長を目指す考えを説明することにしています
どうも、意気揚々と「消費税増税」と「2%超の経済成長」をアピールする様である。債務問題に苦吟する欧州諸国に取っては垂涎の的となるに違いない。
そして、欧州の債務リスクに怯える世界の投機資金は一時の避難場所として「円」を選択するのではないか?
その結果は明らかである。「円高」、「株安」、「製造業の海外移転」、「失業者の増加」、「生活保護受給者の急増」、と言った所であろう。それにしても、かかる状況下での2%超の経済成長とは、まるで魔法の様な話と訝しく思うのは、私だけであろうか?
断っておくが、私は「消費税増税」は止む無しと考えている。しかしながら、こう言った「消費税増税」に伴う副作用を無視して良いとは思っていない。国民の痛みを緩和する為、外科手術に於ける麻酔の如き施策は必要と考える。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役