ニューヨークタイムズの伝える所では、To Avoid a Long Dispute, Google Offers to Settle a European Antitrust Case=Googleは長期に渡るであろう紛争回避の為、欧州独占禁止法関連是正を申し出たとの事である。
Google, facing the prospect of formal antitrust charges stemming from an investigation in Europe into its search and advertising business, sent a letter on Monday to European regulators in an effort to settle the case and avoid a lengthy and potentially expensive dispute.
「検索」と「広告ビジネス」に就いての欧州での調査結果依り、独占禁止法に抵触する疑いが強まったGoogleが、月曜日欧州委員会に対し長期に及び、コストが莫大な訴訟を避ける為、是正に向け努力する事を書面で通知した。
それにしても、「是正」をどの様に達成する積りであろうか? 「アルゴリズム」を開示する事は、Googleの事業の根幹に係る事であり、そう安々と出来るとは思えない。第一、広告代金に依って検索結果を恣意的に操作していた事が公になれば、これはこれでGoogleの鼎の軽重が問われる事となる。
Googleのビジネスモデルに於ける根本問題に就いては、4月のアゴラ記事、Googleの空前の好決算を傍観して良いのか?で指摘した通りである。
企業が事業継続を望むのであれば、最早Googleに対し、リスティング広告代金を支払い続けるしかない構造に組み込まれているのではと思うのである。「独占」がこれを可能にしている。
読者の中には今回のGoogleの行動に対し「唐突」と感じられる方も多いのではないかと推測する。しかしながら、ここに至るまでにはそれなりに伏線がある。
先ず、今年2月に仏裁判所が企業向け地図サービスでグーグルに賠償を命じた。そして、2ヶ月後の4月にドイツでYouTubeが敗訴した。欧州では確実にGoogleの外堀は埋められつつある。
さて、問題は日本である。Googleの独占がもたらす弊害をどの様に捉え、如何なる対策を講じて来たかである。結論から言ってしまえば、指を咥え傍観していただけではないのか?
Yahoo!,Japanが検索エンジンとして従来より使用して来たBingに見切りを付け、Googleに乗り換えたのは一年半前で、今尚記憶に新しい。これで、日本の検索エンジンに於けるGoogleの市場占有率はほぼ100%となった訳である。
公正取引委員会はその弊害に就いてきちんと検証し、国民に説明したのであろうか? 寡聞にして知る所ではない。これでは、公正取引委員会の存在意義自体が疑われると感じるのは私だけであろうか?
国会議員もGoogle問題に就いては呆れる程無関心である。そもそも、問題の本質が理解出来ていないのであろう。先月のアゴラ記事、違法ダウンロード刑事罰導入は将来に禍根を残すで説明した通り、左程重要でもなく、拙速に立法化すべきでないこんな案件に夢中になっている。
ネットで今何が肝心なのかまるで掴めていないのであろう。欧州の毅然とGoogleに対峙する姿とは真逆で、見ていて余り気持ちの良い物ではない。
大変残念な話であるが、多くの重要な問題で、「国会」も「行政」も機能不全と言う状況が散見されるのが今の日本である。国民が眼を光らせ、異議申し立てをするしか手立てがないのである。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役