Facebookやtwitterが基盤的なプラットフォームになったおかげで、口コミマーケティングという従来から存在する手法が、ソーシャルツールを介在させればバイラルするのではないかと思われています。が、ふと冷静になってみると、口コミに関しては一度アカデミックな面に目を向けざる負えない気がしています。
ソーシャルツールがこれほど普及していて、ネタ(プロモーション用の商材、もしくはサービスそのもの)が面白ければバイラルするというのであれば、インターネット上においては情報プラットフォームはいらなくなってしまいます。でもいまだにYahoo!は高収益ですし、NAVERまとめだってここ数年で登場してきた情報メディアです。なぜプラットフォームはいまだに有効なのでしょうか。
ここでは、アカデミックな観点で説明をしながら、実際の事例を「NAVERまとめ」で解説していきます。
1.インターネットで情報が伝播する構造は、複雑系ネットワーク
インターネットはスケールフリーと呼ばれる特質を持っています。例えばだいたいのサイトは、他のサイトから数個しかリンクが張られていないのに、数十万からリンクされたサイトがあったりします。この一部の驚異的なサイトと、数個のリンクを持った多数のサイトがリンクによってつながっている形をスケールフリーネットワークと呼びます。サイトをノードと呼び、ノードとノードを結ぶリンクを枝と呼びます。
これは、Wikipedia周辺のWEBのモデルですが、たくさんの枝を持つ大きなノードが存在し、そのノード同士も枝でつながっていることが分かります。
出典:wikipedia
つまり、情報を広く伝播させたいと思ったら巨大なノードを経由させなければなりません。YahooやNAVERまとめ等の情報プラットフォームは、たくさんのユーザーを抱える超巨大なノードにあたるわけです。
2.プラットフォームにおていは、露出面が要となる
そして、そのノードがプラットフォームであった場合は、プラットフォームの一番良いところに情報を掲出する必要があります。プラットフォームと繋がっているユーザーに、確実に見てもらうためです。
例えば、以下まとめはソーシャルツールで拡散されていないのに(Facebook=0、Twitter=0)、44305viewとなっています。(2012/7/3現在)
A.EXILE AKIRA主演の新「GTO」に囁かれる不安の声
一方先日私が作成した以下まとめは、Twitterで拡散されているのに(Facebook=0、twitter=28)2109viewです。
B.「LINE」既読に、心揺さぶられる人々
Bがtwitterで拡散されているのにAの方が圧倒的にView数が多いのは、Aはトップページの注目まとめに掲載されたのに対して、Bは掲載されずに階層深くに存在しているため、閲覧しに来たユーザーにリーチしないからです。
つまりたくさんのユーザーに枝を持つ超巨大ノードメディアにおいては、ソーシャルで拡散するよりも、いかにトップページに掲載されるかという部分がポイントになります。
※appストアやキャリアが運営する携帯サイトプラットフォームなどは、垂直統合で完全に閉じてしまっている(枝が自社プラットフォーム以外の巨大なノードに接続することがない)ので、その傾向が顕著になります。
3.個人も巨大なノードとなり得る
さらに、個人も巨大なノードとなり得ます。Twitterで100万人のフォロワーがいえば、その人のつぶやきは、100万UUにリーチする情報なのです。例えば以下は孫さんがTwitterで呟いた名言をまとめたものですが、現在10万viewを超えています。作成した当日は3万程度だったのですが、翌日一気に8万viewになりました。それはなぜかというと、孫さんご本人がTwitterで呟いてくれたおかげで、フォロワーに情報が伝播したからです。
孫正義さんがツイッターでつぶやいた名言
影響力の有名人に宣伝をしてもらうのは、昔からあるプロモーション手法ですが、ソーシャルツールの普及により、それが可視化されやすくなりました。つまり、口コミといっても出来るだけ大きな枝を持つ個人に発言をしてもらった方が有効なのです。
ということで、まとめですが
・ネットはスケールフリーなので一部の巨大ノード(メディア、個人)が存在する
・巨大ノード(プラットフォーム)のフロントに情報を掲載することが拡散の要
・もしくは個人として存在する巨大ノードに口コミしてもらう
・完全に垂直統合で閉じている場合は、そのプラットフォーム上での掲載面が全て
ということで、なんだか旧来のプロモーションに見えてきてしまうのですが、中にはFacebookやTwitterで拡散されまくる情報もあります。それは情報そのものが持つ係数(=インパクトや、面白さ、共感できる内容かどうか)によって変わってきます。
原稿が長くなってしまったので、次回時間があれば「どういう情報だったら拡散されるのか?」という点について考えてみたいと思います。
村井愛子