スマホ二強時代は変化するか --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

週末にスマホに関して二つの気になるニュースが飛び込んできました。この「気になること」は将来、世界のスマホ市場に新たなる動きがでる可能性を秘め、注目に値すると思いますので今日のトピに取り上げてみたいと思います。

まず、かなり有名になったアップルとサムソンの泥仕合となっている訴訟合戦。ポイントはサムソンのスマホがアップルのそれにあまりにも似ていることからスタートしています。


そして金曜日、遂にサンノゼの連邦地裁は3日前に仮処分が決定したサムスンのギャラクシータブ10.1に次ぎ、スマホのギャラクシーネクサスもアメリカ内での販売を禁止する仮処分を決定しました。これはアップルにとっては想定以上の勝利だと思います。もともと、アップル対サムスンの戦いはスティーブ・ジョブズのアグレッシブさから始まったものなのですが、サムスンはiPhoneなどへの部品を納入しているという関係において双方がどうも踏み込みきれない感じも無きにしも非ずでした。その上、ティムクックはジョブズほどの戦意を持っていないとされています。

よって、この戦争もひょっとするとどこかで手打ちがあるのではないかと見ることもできたはずです。しかしながら仮処分の決定とはいえ、サムスンがアメリカでタブレット、スマホのトップライン双方を一時的に販売できないのは極めて大きな打撃となります。

もう一つの気になることはブラックベリーで有名なリサーチインモーションの金曜日の株価。僅か1日にして19%以上の下落となったのはウォールストリートジャーナルにもあるとおり同社の現金ポジションへの将来の不安。予定していたブラックベリー10は開発が進まず、最新の発表では2013年の早い時期に遅延されています。その上、5000人に上る一時解雇も発表し、同社の株価は2008年から既に20分の1まで下落してしまいました。

同社は手元現金がまだ2.2ビリオンドルあるようなので直ちに問題が発生するわけではありませんが、その昔、やはりカナダのノーテル社がだどったのと同じ道のりを歩んでいるのではないかという「心配」は当然だと思います。

事実、ブラックベリーはキーボードが着いていて北米を中心に一時ほぼ、デファクトスタンダードといってよい状態になっていました。法人利用が多いため、今でも「まだブラックベリーかい」と冷やかすこともしばしばですが、その呪縛から抜け出したいと思っているビジネスパーソンはかなり多そうです。

世界のスマホシェアはサムスンが30%近くでトップ、ついでアップルが24%程度となっていますが、まさに二強状態でノキア、リサーチインモーション、台湾のHTCなどは10%に遠く及ばず、そのシェアの下落トレンドを止めることは難しそうです。

ハイエンドと称するサムスンとアップル以外は価格が安い普及品が中心であり、当然ながら売っても売っても利益が出ない体質になりやすくなります。もちろん、新興国や新新興国などで今後、スマホ黎明期になるはずで、その場合、廉価な商品が一時的には高需要となるでしょう。しかし、今後は中国なども生産技術を身につけてくるでしょうから普及品クラスは戦国時代が訪れることは間違えありません。

とすれば3位以下のメーカーは合併なり、合弁なりで市場シェアの低下を食い止めると共に開発費を捻出する計画を早急に取らねばなりません。

一方、サムスンを追うアップルですが、もともとアップルという会社は市場を制覇するというより、ファンだけを取り込むというスタンスでした。そこにはIT製品にもかかわらず高いファッション性や芸術性が内包されています。それがアップルの強みだと思います。今回の訴訟の状況では一時的にアップルを含むほかのスマホメーカーにフォローの風が吹くことになると思いますが、それはあくまでも一時的であり、最終的に未来永劫サムスンのスマホが販売できなくなることはないと思います。

それゆえに今後数ヶ月の各社の戦略は大きくそのシェアの構図に影響が出てくるのではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年7月2日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。