リフレ派で量的緩和を主張する人々は、それを主張すること自体に自己満足するか、あるいは強烈な下心で主張していると考えられる。
したがって、彼らには何を言っても無駄なので、あきらめるしかない。
しかし、あきらめるわけにいかないのが、良識はあるが、経済や金融がわかっておらず、同時に(それ以上に重要なのは)市場関係者やエコノミストの主張が、有識者の純粋な議論であると思ってしまっている政府関係者の誤解である。これを解消しなくてはいけない。そのためにはどうすればいいか。
市場関係者が株式市場は大事だ。量的緩和は、実体経済においても期待に働きかけるから大事だ、という。期待はもちろん経済理論においても重要であるが、経済学のわからない人に期待が大事だから、期待の話ばかりするのは、まやかしに他ならない。期待といえばなんでも言える。
ここは、残念ながら、対策がない。政府関係者がまともであれば、日銀が組織防衛のために、日本経済にとってよいことをしない、という議論の怪しさに気づくであろうし、日銀のトップと直接話をすることによって、理解してくれるのを祈るしかない。彼らは、少なくとも官僚よりは自己防衛をする必要性が弱いことは構造上明らかなので、この望みは必ずしも期待薄でもないだろう。
その一方で、実際に経済をよくする政策。これを提言することが、苦し紛れの日銀たたきに走ることを防止する対策となろう。
さて、肝心の経済政策である。
短期の景気対策はせず、長期の雇用増大を図る政策を打ち、構造的に日本経済の水準を高め、雇用と活力を維持する政策を打ち出すこと。これに尽きる。
具体的にはどうするか。
ここから先は、これまで以上にあまりに当たり前で退屈である。
経済のパイを大きくするためには、効率を高めるしかない。そのためには、効率性が高いか、成長性の高い部門に資源を移すしかない。カネとヒトをこれらの分野に移すことが必要である。
そのためには、政府や外部の支援が必要なところにさらにヒト、カネを注ぎ込むことは無駄遣いであることがわかる。したがって、財政出動はやめ、補助金もやめ、支援が必要だといわれている企業には支援しないことが必要である。
景気対策をしないのは、その対策で生まれた雇用は、景気対策なしでは持続できないから、無駄なのであり、パイを拡大することにならないからするべきではない。長期的に持続可能な領域に人材を移すための構造改革をするべきである。
それらの政策は小さなものであっても、積み重ねていかなければならない。マクロではこれはできない。
たとえば、秋田の国際教養大学のことがにわかに注目を集めているが、彼らが生み出す卒業生は年間に200人である。それを積み重ねていくしかないのだ。岐阜にも素晴らしい県立の大学院、情報科学芸術大学院大学(IAMAS)があった。これも設立時の学長が素晴らしかった。そういう個人の積み重ねだ。
あえて、マクロ的なことを言えば、若年雇用は、中高年雇用よりも一般的に重要であり、優先させるべきであるのは、柔軟性があり、新しい分野に適合しやすい、と考えられるからだ。もちろん、一方、これまでの人的資本の蓄積を活用できるのであれば、それはむしろ中高年の雇用の活用が重要になり、一律の定年制の弊害というのはこの文脈で語られることになる。
金融に関して言えば、国債発行を直ちにやめることだ。現実的には、出来る限り減らすことだ。なぜなら、経済的にはもっとも非効率な分野に資金を流すことだからだ。それは社会政策であり、経済政策ではない。
この文脈で言えば、消費税増税は望ましくない。すべて歳出削減で望むべきだ。しかし、社会政策として、経済効率を犠牲にして、消費税増税をするということだ。ただし、ほかの税目を消費税に置き換えるということはありうる。
池尾和人氏が言う、将来の不透明性をなくすのはもちろんだが、消費に関して言えば、消費が萎縮してしぼんでいるわけではないので、かねをぐるぐる回せばよくなる、というような幻想からは抜け出るべきで、貯蓄課税も、インフレも、需要の前倒しをもたらせば、トータルでの消費減少となってしまうので、そのような政策はとらない。エコポイントも、エコ減税も即座にやめるべきだ。パナソニックやシャープが突然崩壊したように見えるのは、エコポイントで無駄なことをしていたからで、経営資源、人的資源、資本をすべて無駄にテレビに滞留させていたことになり、大きなマイナスだった。
シュウカツも壮大なる無駄であるが、これは自律的に変化が現れており、これまでのようなシュウカツを続ける企業やそこへ殺到する学生たちは、わかっていない人々であり、彼らは流行に敏感だから、流れが変われば自然と変化するだろう。
さて、マクロ的には問題はわかりやすいが、政治的にこの議論が通らないのは、地方の中小企業が輸出できなくなって困っている、という状況が政治問題のほとんどであると認識せざるを得ない立候補予定者(現職を含む)にとっては、この対策なしでは生き残れないからだ。
この具体策が提言できれば、日本の政策も安泰となるだろう。
それはだいぶ先の次回に。