過去最大の反原発集会が東京で開かれたり、「原発立国」をマニフェストに掲げて当選した民主党議員が、今度は反原発を主張して離党するるなど、「反原発運動」が盛り上がっている。
原発の国民生活に及ぼす影響の大きさについては論議が分かれるにしても、原発が「リスクの高い」技術である点では誰も異論はなかろう。
反原発論で注目すべきは、日本の反原発論者がモデルにしているドイツの反原発論と「日本の反原発論」が大分異なる事である。
ドイツの「反原発」の中心的な役割を担って来た「緑の党」の幹部は、「原発が怖いから撤廃せよと主張するなら、他国に移民するしか方法は無く、我々は事故発生を受けて脱原発を決めた訳でもない。ドイツの脱原発議論の特徴は、原発に賛成か反対かという話とは別で、原発はリスクの高い技術で、その反対に再生エネルギー技術はリスクが低いと言うのが反原発論の基本である」と、冷静に語っている。
ドイツとは経済、政治環境が全く異なる日本の場合、原発の経済効果や国民生活への影響を持ち出すと、意見が一致する事は不可能なので、原発の「即時停止」が安全にどのような直接的な影響を持つかに絞って考えたい。
核燃料棒は一度使い始めたら最後、その桁外れの熱エネルギーを抑える事は困難で、原発を稼動させようが、停止させようが、安全性を確保するためには、ずっと冷却を続けなければならない事だけは確かで、原発を即時停止しようが、稼動を続けようが、ここ二、三十年は地震や津波によるリスクは変わらない。これは、土素人の誤解であろうか?
脱原発のチャンピオンであるスウェーデンでも、再生エネルギーの開発・普及や省エネの促進によるエネルギー構造の転換は続けるが、既存の10基の原子炉の寿命が来た際に新設原子炉による更新が必要とされれば、その更新を認めると決めている。
ドイツでは、7電力会社が出資してゴアレーベン等に中間貯蔵施設を建設し、そこで使用済燃料を30~50年間貯蔵する方針となったが、原発反対強硬派が、使用済燃料の輸送に反対して実力行使をしたため、発生した使用済燃料は各原子力発電所のサイト内で保管されたままで,地震や津波の危険がない事で胸をなでおろしているに違いない。
チェルノブイリや福島原発事故がもたらした被害は、単なる経済計算で済ます事の出来ない凄惨なもので、安全には特別の配慮を必要である。然し、いくら脱原発の看板を掲げても、すぐ廃止なのか40年後なのかで大きく異なり、それぞれの具体的な手順を示さなければ、政治的パフォーマンスと受け止められても仕方がない。
日本の場合、地震や津波は原発の稼動、不稼動には関係なく襲ってくる。それなら、要員を最低に抑えざるを得ない「停止」より、運転要員が多数常駐する「稼動状態」に置く方が、安全では? とも思える。
更に、日本の原発を即時停止しても、九州や中国地方とは目と鼻の先の韓国には21基の原子炉が操業中で、今後も増設計画が軒並みである。これでは、日本の原発を全て即時停止しても、無意味である。
こうして見て来ると、安全面に限れば、「停止」も「稼動」も変わりないのではないか? と思え、国民の安全保障には「即原発停止」が絶対に必要で、「稼動」すると危険だと言う理由が良く理解できない。
私は「原発即停止」より、震重要棟や原子炉建屋への水素爆発防止の措置、ベントの際に放射性物質の拡散を防ぐフィルターの設置、津波に直撃される心配のあるオフサイトセンターの位置の見直しや放射線防護機能等へ早期に転換する原発政策をを優先するべきだと思う。
然も、これ等の政策は「即時停止」「再起動」いずれにとってもな重要課題である事を考えると尚更である。
要するに、急ぐべきは原発政策の転換であって、「原発停止」ではないと言うことである。特に、地震や津波など自然災害の多い日本では、原発の停止はドイツやスウェーデン以上に慎重に行うべきだと思うが如何だろうか?