民主党政権の次に来るもの

山口 巌

朝日新聞の伝える所では、民主・松井参院議員が引退表明 元官房副長官との事である。

民主党の松井孝治参院議員(京都選挙区)が18日夜、京都市で記者会見し、任期が切れる来夏の参院選に立候補しない考えを明らかにした。政界から引退し、「別の形で公共の役割を果たしたい」という。

松井孝治参院議員はライフワークを「わが国の統治構造の変革」と明言され、残念な結果にはなったが「国家戦略局」実現に向け、随分と汗をかかれたと聞いている。

選挙と言う野戦で百戦錬磨の軍司令官、小沢議員が先般離党し、今回は民主党政権の正当性の中核を担う松井議員の引退表明である。率直に言って、民主党は「抜け殻」になってしまった。これから先は、所詮、何をやっても消化試合に過ぎないという気がする。

政治の空白を作らぬ為に、早く選挙を実施し、国民の意向に沿って政権交代を行うべきであろう。

そして、このタイミングで民主党政権の三年間とは一体何だったのか? 何故、民主党は政権奪取に成功したのか? 民主党政権の後に来るものとは一体何なのか? 国民一人一人が自分の頭で考えるべきと思う。

戦後政治の分水嶺は、1985年のプラザ合意ではなかったのか? 国土が焦土と化した1945年から1985年迄は、「坂の上の雲」宜しく、只管アメリカの背中を追い、登り続けた40年間であった。成程、「脚力」と「根性」は必要であったかも知れないが、進むべき方向は明瞭で迷う必要はなかった。

政治の仕組みや社会体制も、これに順応するように作られた。高度成長の時代と自民党に依る「利益誘導」の政治である。官僚組織は立法や政策と言った実務を丸投げされる事で組織を肥大化させた。

プラザ合意が日本にもたらしたものは、直接的には下記円高である。副作用は、円高対応の為の金融緩和に起因する「バブル」であった。「バブル」は必ず破裂し、結果「不良債権」が残される。

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出典:Wikipedia

1990年以降の日本は、製造業にあっては「海外移転」が、金融業にあっては「不良債権処理」が同様メインテーマであったと考える。そして、高度成長と利権誘導の残差とも言える自民党は古くなり役に立たなくなってしまった。分裂に至ったのは至極当然の結果である。

疲弊する日本に、更なる追い打ちをかけたのは1989年のベルリンの壁崩壊であった。その時期、私は中近東に駐在しており、友人の西ドイツ大使館のコマーシャルアタアシュと祝杯を挙げた記憶がある。

形而下的には東ドイツの若者がベルリンの壁を打ち壊したに過ぎない話であるが、結果、世界の労働市場が統一された訳である。私は、その半年後に帰国し、新たな担当市場である中国や、これに雁行するであろうベトナムを訪問し、若い労働者の高い勤労意欲と賃金のあまりの安さに言葉を失った。

1990年以降の日本の世相を示す言葉として、「失われた20年」を目にする機会が多い。別に20年が失われた訳ではなく、幸せな高度成長時代を経て、1985年で山頂に立ち、体制を一新して、一歩一歩、足元に気を付けながら下山すべきを、国の統治構造は相変わらずで、右往左往に明け暮れたと言う所であろう。

2009年10月の国会における鳩山内閣総理大臣所信表明演説 で表明された理念の多くは実現されなかった。しかしながら、無視されるべきとは決して思わない。寧ろ、この理念を引き継ぐ政党、リーダーが次の日本を指導する事になるのだと思う。具体的には、下記3点に注目している。

<政治主導>
私が主宰する行政刷新会議は、政府のすべての予算や事務・事業、さらには規制のあり方を見直していきます。税金の無駄遣いを徹底して排除するとともに、行政内部の密約や省庁間の覚書も世の中に明らかにしてまいります。

<予算の可視化>
もうひとつの「大掃除」は、税金の使い途と予算の編成のあり方を徹底的に見直すことです。 国民の利益の視点、さらには地球全体の利益の視点に立って、縦割り行政の垣根を排し、戦略的に税財政の骨格や経済運営の基本方針を立案していかなければなりません。私たちは、国民に見えるかたちで複数年度を視野に入れたトップダウン型の予算編成を行うとともに、個々の予算事業がどのような政策目標を掲げ、またそれがどのように達成されたのかが、納税者に十分に説明できるように事業を執行するよう、予算編成と執行のあり方を大きく改めてまいります。

<地域主権>
いかなる政策にどれだけの予算を投入し、どのような地域を目指すのか、これは、本来、地域の住民自身が考え、決めるべきことです。中央集権の金太郎飴のような国家をつくるのではなく、国の縛りを極力少なくすることによって、地域で頑張っておられる住民が主役となりうる、そんな新しい国づくりに向けて全力で取り組んでまいります。そのための第一歩として、地方の自主財源の充実、強化に努めます。 国と地方の関係も変えなければなりません。国が地方に優越する上下関係から、対等の立場で対話していける新たなパートナーシップ関係への根本的な転換です。それと同時に、国と地方が対等に協議する場の法制化を実現しなければなりません。こうした改革の土台には、地域に住む住民の皆さんに、自らの暮らす町や村の未来に対する責任を持っていだたくという、住民主体の新しい発想があります。

さて、民主党政権から権力を移行されるのはどこだろうか?

ずばり、「わが国の統治構造の変革」で旗色を鮮明にし、真価を世に問い続けているのは橋下大阪市長である。国民の人気も高いようである。国民は直感的に今の日本の最優先課題が何であるか理解しているに違いない。

橋下氏が日本の歴史に名を留めるリーダーに成り得るのか? 或いは、民主党政権同様腰砕けに終わるのかはやってみなければ所詮判らない。世論は次への期待に動いていると思う。

山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役