私は過去、基本的に駐在員については辛口の評価をしてきました。私自身が駐在員という立場であった時代を含めて考えてみれば随分会社に甘えていたような気もします。しかし、それから長い年月がたち、日本企業が海外において韓国や中国、台湾勢との直接対決をする中で日本勢は案外、脆いということに気がついたかもしれません。圧倒されるような海外勢の責めを日本の中にいては気がつくことはないでしょう。
絶対的に自信があったはずのメードインジャパンの新製品もそう簡単に売り込めないということを経験されたでしょう。
ですが、その頃から日本の駐在員も変わってきたかもしれません。日経ビジネスの特集「ニッポンを売り込め」では海外の最前線で活躍する日本人ビジネスマンにスポットを当てています。そこには現地の市場で大きく成長し、好成績を残した数々の実例が記されています。感慨深く読ませてもらいました。
そこで活躍する数々のビジネスマンの特徴として現地化といっても良いほどの長期にわたる駐在や出戻りと称する同じ場所に再赴任など現地の事情を熟知することでマーケットシェアをあげてきた猛者が多いことに気がつきます。
以前から海外駐在員は目線は本社、海外赴任は休憩期間などと揶揄されて続け、日本で出来なかったゴルフを思いっきりやろうとか、家族サービスに精を出すといった「ウサギと亀」のウサギを地で行っていた人も多かったと思います。これを失われた20年と重ねあわせれば20年間眠り続けたウサギがようやく目覚めたとも言えるかもしれません。
私は珍しく駐在員歴が連続で12年ぐらいあり、現地化という点から駐在員にしては良い仕事が出来たと思っています。もしも私に代わって誰かが引き継いでも一定の成果はあったかもしれませんが、不動産開発事業というゼロからモノを完成させるという作業の中でパッションだけは引き継げなかったと思います。パッションとは飛行機が滑走路から飛び立ち、高度を増していくシーンと同じで業務に熱い思いが加わってこそ成長し、上に上がっていけるのです。
もしも既に安定飛行と化している業務ならばパッションを持たずして一定の高度で飛行はできるでしょう。しかし、ライバル企業がどんどん周囲を抑え上がろうとしても上がれない状況になっているのが海外で良く見かける光景なのです。
特集記事の中でも迫力ある逸話がたくさんあります。YKK吉田忠裕会長に「そこまで言うならもっていけ」といわせたイタリア駐在員の説得力、あるいはパナソニックの炊飯器がインドで売れない理由が料理環境の違いにあったことに気がつきインド仕様の商品を開発し、その後インド市場で大きく成長したインド20年の社員などはまさに社員が本社と敵対関係すら持つほどの熱意で本社を動かしています。
私はこのブログで折に触れて申し上げていますが、本社は現地の事情など知るわけなく、現地事務所の情報を受ける本社窓口は本社内でプレゼンする為の必要情報収集機関ぐらいだと思っています。ならば、現地にもっと権限を委譲し、海外現地法人をそれこそ独立採算で管理するぐらいの自由度を持たせたほうが社員が生き生きとするでしょう。海外でやる気ある人間は本社のしがらみから放たれ思った以上に活躍する人はいるものです。
要は人は使い方だと思います。ニッポンの最前線にいる人たちをもっと支えていかねばならないですね。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年8月1日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。