オリンピック強化費を最も効率的に使っている国はどこか?

MATSUMOTO Kohei Ph.D.

前回の「オリンピック強化費はメダル獲得数をどの程度増やすか」に続く議論である。

前回は一人当たりに換算した強化費が単位人口当りのメダル数に非常によく反映していることが明らかになったことを論じた。そこで今回は一人一人が生み出した財のどれくらいがメダル数に反映されているのか、を報告する。


方法は前回のアルゴリズムを踏襲した。前回のデータにGDPの項を加えた。GDPに対する強化費が、メダル数とどのような関係かをプロットした。またそれらの効率となる指標を上記のプロットの傾きを求めることで、各国と比較した。

結果を下記のプロットに示す。GDPbasedmedalcost横軸のGDPあたりの強化費とは、非常に平たく言うと、例えば各個人の年収に対してどれくらいのパーセンテージでその強化費に供しているか、を示している。一番低いのは日本であり、年収百万円当たり、驚くべきことにわずか6円弱であった。最も高かったのはシンガポールで年収百万円当たり640円余りであった。縦軸のメダル獲得数は前回のデータと同じである。

このプロットを見ると左に凸のようなグラフにも見えなくもないが、その根拠は乏しい。従来通りオーストラリアを最大とするリニアな関係であると言える。この傾きを取ることで強化費に対するメダル獲得の費用対効果を見積もることができる。その傾きを計算した結果が次の表である。sloperank

これを見ると明らかなようにトップは日本である。以下、アメリカ、カナダ、と続く。百万円当たり6円も払っていないのだから当然といえばそのとおりである。これについては一人当たりの強化費を横軸にとった場合、また何も規格化しない強化予算そのものでとった場合でもやはり日本がトップであった。

相変わらずこの強化費の定義が不明である。日本のスポーツ資金環境が少し諸外国と変わっており、例えば実業団などで資金援助を受けている場合どのように定義をするかが曖昧である。よって、一概に比較できないのは承知のうえで結論すると、上記のデータを比較した限りにおいては、日本が最もオリンピック強化費を最も効率的に使っていると考えられる。

(所感)本データをコンパイルした所感として、逆に言うとスポーツにまだまだ理解がないとも言える。大変少ない予算でもっとメダルを云々というのは、財源がないのに社会保障を充実せよと主張しているどこかの国の消費者に似ており、虫の良い話である。これからは強化費は増えていくと思うが、どのように資金の蛇口を捻っていくかのシステム論が活発になるものと思われる。

因みに現在行われているロンドンオリンピックでは、これまでのメダルランキングは、水泳や柔道で金メダル期待の中、思うような結果が伴っていないこともあり、上で示した国の中では下位である。しかしながら総メダル獲得数は非常に多く、アメリカ、中国についで3位である。少ない予算でこのメダル数は大健闘であると、上記のデータからは示唆される。

それにしても日本人は普段何に消費しているのだろう。

松本 公平 (MATSUMOTO Kohei Ph.D., Geoscientist)
Twitter: @MATSUMOTO_K_PhD

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