野田首相は呪文を唱えたのでしょうか?
早くもなく、遅くもない解散という言葉に対して政治家から専門家までその解釈にバラツキが出ています。
この解釈をめぐり、私は時期から推測せずに野田首相のポリシーから考えてみるとどうなるかというアプローチを取ってみたいと思います。消費税法案はまず、通過させました。次に赤字国債発行に必要な特例公債法案を通さなくては予算問題が出てくるでしょう。これは重要です。次にいわゆる国民総背番号制度である共通番号(マイナンバー)法案は今般の社会保障と税の一体改革の一部をなすものですから通さねばならないでしょう。
そして最後はTPP交渉参加かと思います。
ここまでくれば野田首相は解散総選挙に入ってもスッキリした気持ちで望むことが出来る形だと思います。
そこまでを野田政権が進めるとすれば、TPP交渉参加決議を年内に行うという前提で11~12月の解散が最速ではないかという感じがいたします。
一方、仮に今すぐに解散した場合、誰が政権を取ったとしてもこれら三つの問題は避けて通れなくなるのですが、新しい与党がそれを前向きに進めるとしても時間に負ける気がするのです。ならばぶれない野田首相がその影響力を行使しながら突っ走ってしまったほうが正解である気がいたします。
谷垣総裁と密約でもあれば別ですが、野田首相の性格からすれば裏取引的な解散時期に握りがあるようなやり方をしないのではないかと思います。
もう一つは党利党略という面から考えると解散総選挙の場合、民主党と自民党/公明党は連立する可能性が非常に高いのではないでしょうか? なぜなら、残りの政党は規模的に日本の政治を司るほどの人的組織を持ち合わせておらず、結果として民主か自民と連立をしなければならない運命にあるのです。
ところが実態からすればどれだけ民主と自民の人気が低迷しているとしても両党あわせれば50%近くは確保できるわけで安定与党は確実な戦略なのです。ならば、公明を含む三党とも決め手に欠ける現状を考え合わせれば両党が何らかの形で連携するしかないと思われます。
それを前提とするならば9月中の解散で小党の準備不足の中を強行し、野田/谷垣両名のたすき掛けで政権を進めるというシナリオは好む好まざるに関わらず、もっともやりやすいシナリオではないでしょうか?
政治家も人の子、つまり、議員というポジションにしがみつきたいものです。オマケに大臣になりたいという野望も捨てられません。連立すれば双方にとってそのおいしい部分は転がり込んでくるわけですから悪くない選択肢ということになってしまうのです。
もちろんどうなるか、注意深く見守らなくてはいけないと思います。しかし、野田首相は菅元首相とは違い、ポジションにしがみつくタイプではなくもっと律儀で論理的な思考を持っているように思えます。よって、来年の衆議院任期満了近くの解散といっただまし討ちのようなことは私はないと見ております。
さてどうなるか、実に興味深いところであります。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年8月11日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。