ブロゴス記事、香港活動家の尖閣上陸―法に基づく強制送還は最善の政治的な判断 を拝読。内容に就いては100%支持すると共に、末尾の下記三行は特に重要と考える。
「弱腰だ」「起訴すべきだった」など、いろいろな議論があります。それはまさしく政治的な判断に関わるところで、最終的にこれは強制送還すべきであると政治的に判断したということです。そして、それが最善であると、私は思っています。
副総理と言いう立場での発言であり、且つ、「外交」と言う相手のある話故、些か隔靴通用の感は否めないが、これは致し方の無い話かも知れない。寧ろ、国民に規範を垂れるべき立場の人間から、今回こういう明瞭な指針が示された事を多とすべきなのであろう。
尖閣に対する私の基本的な考えは、尖閣関連日本は断固自重すべき で説明した通りである。今回は、補足を兼ねて今少し課題毎の説明を試みたい。
先ず第一は、尖閣は現在日本が実効支配しており、中国政府も現実的にこれを黙認してきたと言う歴史の事実である。そして、日本政府は一貫して「領土問題は存在せず」と説明している。
従って、中国の不良漁船であれ、香港の市民運動家であれ、尖閣への上陸は一律日本への不法入国として強制送還すれば良いだけの話である。日本側が騒げば騒ぐ程、結果、領土問題の存在を世界に告知する事になり、日本として自らが不利な状況を作る事になる。
第二は、中国の現状である。BBCのこの記事が示す通り、中国製造業の落ち込みは半端ではない。近い将来失業者が増大し、デモは当然として全国規模の動乱が予想される。
本来、失業者を中心とする国民の不満の矛先は中国共産党に向かうべきであり、尖閣を切っ掛けに日本がこれに取って代り、顔面にパンチを受ける様な展開は避けるべきである。
第三は、下関条約以降の日中間歴史の経緯である。これに就いては、大前氏のこの記事が最も正鵠を射ている。
中国共産党の最大の功績は抗日戦争を戦い抜き、連合国の一員として勝利すると共に国連常任理事国の地位を得た事である。しかしながら、終戦後は迷走し「文化大革命」の如き暴挙に及び国を疲弊させた。
現在の中国の繁栄は鄧 小平の提唱した「改革開放」政策に依るものである。日本からの先端技術と資本の導入が大きく貢献した事は間違いない。
この代償として、中国は尖閣の日本に依る実効支配を黙認した訳である。勿論、国内的には尖閣は中国固有の領土とアナウンスして不要な紛糾を回避している。従って、尖閣は中国に取って外交問題であると共に国内問題なのである。
最後は北東アジア、東南アジアに於けるパワーバランスの変化である。これに就いては、領土拡大の野心を露わにする遅れて来た大国、中国で説明した通りである。尖閣を含む、北東、東南アジア全域に於ける中国の領土拡大の野心に如何に対応するかの視点が重要である。
言うまでも無い事であるが、日本の安全保障の要となる「日米同盟」の発展的進化が鍵となる。民主党政権は最近発表された、The U.S.-Japan Alliance –Anchoring Stability in Asiaをしっかり勉強せねばならない。
何度も繰り返し恐縮であるが、中国の侵攻に対応する為にはベトナム、フィリッピン、インドネシアと言った中国と領土問題を抱える国々との関係強化は不可避である。しかしながら、万事「事無かれ主義」の外務省が積極的に取り組むとは思えず、日本政府としても抜本的対応が必要である。
経済力が劣化すれば国際社会での存在感が希薄化し、結果、近隣諸国の跳梁跋扈を招く事に直結する。矢張り、経済のV字回復も必要となる。原発再稼働反対が、如何に日本に対する「テロ活動」であるかは、流石にここまで説明すれば明らかであろう。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役