「反日」の旗を降ろせない分断国家

石田 雅彦

日本の周辺には分断国家が二つもある。南北の朝鮮と中国と台湾だ。日本の植民地支配はこれら分断化の直接の原因ではない。いずれも東西冷戦とイデオロギー的な対立で二つに分かれた。

韓国と北朝鮮は停戦状態を維持しつつも事実上の交戦状態がずっと続いているが、南北どちらの統治主体も「統一は悲願」というスローガンを打ち出し、国民にも表向きそう唱え続けてきた。


だが、中国が台湾を併呑したがっている以外、どの統治主体も実は統一など望んでいなさそうである。民族は一つになりたがるものだが、韓国の政財界のリーダーも北朝鮮の独裁者も、本心から統一を望んでいるようには見えない。

どちらも互いに相容れない経済社会システムや国家観なので当然だが、統一後のイニシアティブが不明なこともあり、両者のこうした態度は半ば常態化し、統治主体が分断を固定化してきた。ようするに、南北朝鮮それぞれの国家観は、分断を前提に築き上げられている。

同時に、日本を含む周辺各国も南北朝鮮の統一を望んではいない。統治主体も国際的にも統一が望まれていない以上、両国民の願望はどうであれ、両国が一つになる可能性はかなり低い。

だが、一つになろうとする民族の求心力は強い。それを阻み、国を分断し続けておくためには、国内外へ向けてのテンションが必要だ。韓国の場合、それは国内向けには「反日政策」というテンションとなり、国際的には反日的なデモンストレーションとなる。

一方、北朝鮮の場合、内向きには独裁者の神格化、外向きには対米勝利、というのが分断固定化へのテンションだ。また、このテンションを分断された一方への敵愾心として向かわせないのは、国民向けには「統一」を望むポーズを取らざるを得ないからであるし、なるべくなら同じ民族を攻撃の対象にしたくない、という国民感情に配慮しているからである。

分断国家に限らず、国家主導の国家観は国民への教育で深化徹底させようとするが、韓国の「国家観」は「反日」と表裏一体となり、国民への教育でもそれを教え込んできた。分断国家であり続けるために韓国は「反日」の旗を降ろせない。南北朝鮮が分断国家であり続ける限り、韓国が「反日政策」を変えることはないだろう。