シャープ交渉の行方を大胆予想する --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

シャープの再建交渉でキーとされた鴻海精密工業の郭董事長との最終交渉、それを受けた「見直し提携案」の発表を行うのではないかと見られていましたが郭董事長と奥田隆司社長の会談すら実現せず、予定していた記者会見もキャンセルして一日早く帰途に着きました。

8月24日の私のブログで本交渉は鴻海が主導権を握っているのであり、シャープとの交渉は大きなハンディキャップを背負ったゲームといった内容のことを書かせていただきました。更には鴻海は「やめた!」という可能性があるとも指摘しておきました。


私は内部事情は存じ上げませんのであくまでも公開されている情報のみをもとに推測するだけですが、私の読みはこうです。

  1. 鴻海はシャープはそこまで欲しくない。欲しかったのは堺工場だけ。
  2. シャープも邦銀側も鴻海に10%以上の株式を握ってもらいたくない。
  3. だが、時価換算で9.9%程度の株式を鴻海に持ってもらうとそれは僅か200億円規模でしかない。
  4. シャープが目先の必要キャッシュとして銀行と折衝しているのは1500億円規模である。
  5. となれば鴻海に筆頭株主として大きな顔をされた上に僅か200億円しか手に出来ないのであればシャープの再建には不十分といわざるをえない。

以上より、私の推測はディールが成立した堺工場は別としてシャープ本体については鴻海側の本気度を試す流れのような気がしております。というより、郭董事長が奥田社長にすら会わず、予定を切り上げて帰国したのは事務レベルでそこまで達していないという意味であり、交渉は決裂状態だったのではないでしょうか? そしてその決裂を作った原因は日本側にあったような気がします。

以前より申し上げておりますが、外国企業とのディールで温情は一切ありません。儲かるかどうか、それしかないのです。鴻海からすれば数百億円でシャープの筆頭株主として将来のビジネスに幅を利かせられるおいしすぎてたまらないディールだったのです。が、不幸にも株価がここまで下落してしまい、もっとおいしくなると思った鴻海側とこれ以上はもう無理、と踏んだ日本側とのギャップ以外の何者でもなかったと思います。

結論からすれば鴻海が一番得をしています。それは堺工場をゲットしたのですから。もともと鴻海はEMSの会社。ですから最新鋭の堺工場は本業にずばりマッチしてくるのです。ではシャープ本体ですが、鴻海が同社を抱え込む積極的理由が私にはまったく分かりません。このディールそのものがルーズルーズ(勝者なし)のような気がします。

交渉の読み方は難しいのですが、大所高所から事の本質を捉えながらみると私にはこんな風に読めてしまいます。真実はどうなのでしょうか? 今後の展開が気になります。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年9月2日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。