日本大企業が失ったAmazonの持つ野心と発想力 --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

先日北米のニュースでアマゾンの電子図書リーダー「キンドルファイアー」が売り切れたと発表されました。また、北米の電子図書リーダーとしての市場占有率は20%を越す状況になっており、多分、9月6日ごろにも新型のキンドルが発表になる公算があります。北米では絶好調といえる状況でしょう。

一方、株価を見ると250ドルという史上最高値圏にありますが、一株当たり利益の何倍まで買われているかというPERでみると実に300倍という水準にあります。それでもアマゾンの株が買われる理由は何でしょうか?


先日日経ビジネスにその答えのヒントとなる記事がありました。それはアマゾンがウォールマート社の創成期とそっくり似ている歩みをしているということです。そしてその後もウォールマートは高い成長を記録し、投資家から見ればウォールマートの投資は決して高いものではなかったということからアマゾンも同じ歩みを踏むのではないかという二匹目のどじょう狙いという事でしょうか?

日本に目を向けるとキンドルの発売は年初、ジェフ・ペゾス氏が2012年内に国内販売と謳い、4月に近日中に発売とするとしたもののいまだにその気配がありません。噂では書籍が集まっていないのではないかとされています。

一方打倒アマゾンを掲げて頑張る楽天がカナダの会社を買収して発売したKOBO。これが鳴り物入りだったのに売り出したとたんズッコケてしまい、むしろ、アマゾンを有利にしたような状況になっています。もちろん、天下の楽天ですから(というより、中国で失敗したこともあり、KOBOで失敗して二連敗にはなれないでしょう)。KOBOの建て直しには全精力を注ぐことと思います。時間はかかるかもしれませんが改良版も出来るでしょうし、本のソート(検索のしやすさ)も改善が行われると思います。

しかし、アマゾンの存在はやはり楽天でも脅威のはずです。では今後、アマゾンは更なる成長を遂げるのでしょうか?

私はそんな気がします。もともとキンドルを出した時点でペゾスの天才的ビジネスセンスにハッとさせられました。インターネットの契約なくして本をダウンロードできるという発想は凄かったと思います。いかにもアメリカらしい常識を覆すアイディアがちりばめられていました。ペゾスが健在である限りまだまだ出てくると思います。アマゾンとはそんな会社だと思います。

私が今日、アマゾンを取り上げたのは日本にこのような野心と常識感をすっかり打ち破るような発想を持つ会社があるのだろうか、という素朴な疑問からなのです。私が外から見る限り、日本の会社にはイマジネーションと壁を打ち破る独創性を持っている会社が少なくなってきたような気がします。そして、それは大手になればなるほどその傾向が強くなってきます。

オーナー会社やカリスマ性をもって経営しているところは良いのですが、いわゆる集団合議制でコーポレートガバナンスをしっかり踏襲している会社ほどある意味、ワイルドさがなくなってきている気がします。エリート会社はネクタイとスーツが似合うけれど野心に燃えているかというと私には疑問符がついてしまうような気がします。

今日はこのぐらいにしておきましょうか?


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年9月4日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。