「日本史」の終わり
【内容紹介】
80年代、世界有数の経済大国だった日本は、今なぜ中国や韓国に追い抜かれてしまったのか? 本書は日本を代表する経済ブロガーと、『中国化する日本』で脚光を浴びた気鋭の歴史学者が、日本の歴史を辿り、現代の「決められない政治」や「変われない企業」といった日本停滞の原因を縦横無尽に語り合った成果である。「明治維新後、西欧化を図り、わが国は世界に類を見ない高度成長を遂げた」という歴史の通説は幻想であり、実は日本がいまだに江戸時代から進歩していないというのが、両者の共通認識である。全国300もの藩が別々に法律や武力を保持し、ムラ社会の掟で問題解決するシステムが、内向きで縦割りの社会構造を生み、全体戦略や強いリーダーが現れない原因を作り出したのだと指摘する。歴史を見れば、外からの衝撃を吸収しながら豊かな国になった日本人の、変化への適応力の強さを活かすことで、グローバル化に対応する道はある! 通説を覆す一冊。
【目次】
第1章 中国から歴史を見る
中国という脅威/「他民族中心主義」からの脱却/中国が世界史のベンチマーク/集団を守る遺伝子
第2章 古代から日本人は「平和ボケ」
人類の15%は殺されていた/宗教や言語も戦争から生まれた?/「スパンドレル」としての文明/人間は徹底的に合理的/農耕社会の成立と「自然国家」/「戦争機械」から歴史を見直す/歴史は感情で動く
第3章 戦争が国家を生んだ
秦は「近代国家」だった?/暴力だけで国家は統治できない/水利構造と日本社会/日本人は無宗教か?/丸山眞男の探究した「古層」/ポストモダンの日本?/国のかたちを2つの軸で見る
第4章 中世に始まる「失敗の本質」
民主主義は普遍的か/平和な国家はコモンローに向いている/法律に現実を合わせる過剰コンプライアンス/失われた日本のコモンロー/結果を重視しない「動機の純粋性」/長い平和が曖昧なルールを生んだ/所有権の未成熟/国家が「暴力装置」であることを知らない日本人/霞ヶ関は儒教官僚の街/中世の「悪党」/一向一揆に可能性はあったのか?
第5章 中国は昔から「小さな政府」
中国の「宗族」と日本の「村」/グローバル化しやすい中国人、しにくい日本人/中国人をつなぐ「関係」のネットワーク/「場」に依存しない中国人の強み/朝鮮半島は儒教の教条主義/ExitとVoice
第6章 西洋近代はなぜ生まれたのか
「大分岐」の原因/契約の西洋とデポジットの中国/キリスト教が近代化の源泉/戦争が西洋近代を生んだ/産業革命と勤勉革命/今も受け継がれる勤勉のエートス/租税反乱が法の支配を生んだ/日本には法の支配がない
第7章 全員が拒否権をもつ日本
日本はいまだに「水戸黄門」の世界/官僚は法律より強い/司法の独立性が強すぎるアメリカ/司法が空気を読む日本/戦国時代を「解凍」した明治維新/所有権の曖昧さ/全員一致が「アンチコモンズ」を招く
第8章 霞ヶ関という不思議の国
明治憲法の「空白の中心」/スパゲティ状にからんだ法律/官僚の仕事の8割は根回し/日本の官僚制度は「ブロン」か「キマイラ」か/「財務省支配」という神話/地中に隠れた霞ヶ関のリゾーム構造/全会一致が日本社会の規範
第9章 「決められない政治」は変わるか
小泉改革は「個人商店」/小沢一郎氏の挫折/「武士は食わねど……」の倫理/橋下市長の巧みな演出/日本の左翼は「江戸時代派」/左翼が転向する理由/知識人の「左翼コンプレックス」/二段階目のない二段階革命/
第10章 日本は「中国化」するのか
高度成長は奇跡ではなかった/大分岐から大収斂へ/国内的には「大分岐」が起こる/中国はソフト・ランディングできるか/忘れるという合意
第11章 「長い江戸時代」の終わり
日本は変われるのか/財政破綻で何が起こるか/主権国家の限界/「日本史」の終わり/