一本足経営からの脱却、ソフトバンクのアメリカ携帯第三位の買収提案などのニュースが出てきたことを踏まえ、もう一度、多角経営について考えてみたいと思います。
以前アセットライトということをこのブログで書いたことがあります。世の中の移り変わりのスピードが速く、絶対というビジネスの基盤がなくなってきたことを前提にビジネスの時代の変化をすばやく察知し、将来の予想をしながらスクラップアンドビルドを進めることであります。
日本では多額の資金が投入され光ファイバーが敷設されましたが、いまや、このインフラはいらなくなる可能性があります。それはLTEという形で無線の高速通信が可能になるからです。多分LTEは日本国内で今後数年以内に非常に高いカバー率となり日本の通信をすっかり変えることになるかもしれません。しかもそれは日本でむしろ最先端ではなく、欧米では既に着々と普及が進んでいます。
つまり、この場合は「光」という輝きを持ったキャッチがくすんでくる、という事です。このビジネスライフ、僅か5年-10年ぐらいでしょうか?
ブックオフは今後、生き残れるか、といえば新しい事業の柱を持ってこない限り今後、成長はないと断言できます。なぜならば今でこそ電子書籍は全体の3%程度の普及率ですが、世代間ベースで考えればこの普及率は確実に上昇することは歴史が語っています。
レコードの音質を大事にする人たちにとってCDの音は冷たい感じだといわれました。ネットでダウンロードすれば圧縮された音は伸びやかさを欠き、つまらない音にしか聞こえません。しかし、今、超高音質の音楽がダウンロードできる時代となりました。これはオーディオのあり方を一変させる可能性があるのです。
日本企業は今後、自社のビジネスが時代の流れのなかでどのような位置づけにあるのかを考えなくてはいけません。不変のビジネスはない、というのが前提でありますが、日本のような移り変わりのスピード感に対して海外では案外鈍いところもあります。それはスピードについていくというもの新しさに対するハングリーさがそこまで備わっていないという面は否定できないでしょう。ビジネスの多角化においてそのあたりの温度差については十分理解すべきかと思います。
ところでこの多角化ですが、バブル崩壊の一つの理由として企業がこぞって不動産投資に走ったことが上げられます。不動産をビジネスとしていない会社が次々と不動産、ホテル、ゴルフ場投資に走ったわけです。まさに本業とはまったく関係ないところに単に「儲かる」という節操のなさが後々に大きなツケを残したことは言うまでもありません。
多角化というのは本業と関係あるビジネスの範囲内で行うべきです。なぜなら無関係であれば将来その部門を成長させるための人材が存在しないという問題が生じるからです。例えば本業とかけ離れたホテル投資をした会社は随分あり、今でも頑張っている会社はあります。ですが、そういう会社の内情を見れば、その部門の人材は固定化し、次の人材が育たないどころか、不在という状況にあります。厳しい見方をすればどうみてもこの先継続できる状況にない、とみざるを得ません。
もう一つ、多角化をする上で私が感じることは「顔を変えよ」という事であります。経営者の創造力は孫正義のような方は特殊であり、一般的には限界があります。残念ながら私から見れば柳井正氏も既に枠からはみ出ない経営者に見えます。ならば新規事業は多大なる権限を委譲し、任せる経営にすべきです。そこにはあめとむちでもってコントロールするしかないのです。
日本は集団経営体制をとることが多く、ヒーローを出さないのが日本型経営の特徴であります。ちなみに日本人に「日本に英雄はいたか」という質問をすると割と答えが出ないものです(せいぜい坂本竜馬ぐらいでしょうか?)。
今日のポイントです。早い時代変化に対応するには先を読み、自社の発展形を考え、事業を多角化しながらスクラップアンドビルトをしやすいようにすること、そして、人材は常に新陳代謝をし、新しい考えを取り込むことが重要ではないかと考えております。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年10月14日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。