ウッドフォード元オリンパスCEOへのインタビュー記事が日経ビジネス・オンラインにでていました。オリンパス事件以来ではひさびさのメディアへの登場です。もちろん見方が表面的という批判があるかもしれないとしても、日本を熟知している海外の元経営者は、日本が抱える本質的な問題を指摘しているように感じます。
出る杭を認めろ。目を覚ませ、ジャパン!:日経ビジネスオンライン
オリンパスも結局は、戦略も展望もいまひとつ見えない、もっともオリンパスの経営陣にとっては、あたりさわりのないSONYとの資本・業務提携というところに落ち着きました。経営が傷んでいる企業と企業がつながったところでダイナミックな事業展開が生まれてくる可能性は極めて低いといわざるをえません。
このところのビジネス界の動きを見ると、いわゆる大企業と、それぞれの分野で強いポジションを抑えている企業との経営の質の違いです。前者はウッドフォード元CEOが指摘している言葉を借りれば、「良く言っても平凡な経営者、多くの場合、平凡ですらない経営者によって経営されている」といわれてもしかたない戦略の失敗を続け、海外からの追い上げの前に敗北し、経営の根幹すら揺らぐ危機に陥ってきている企業もでてきています。
一方では、批判はあるにしても、JAL再建に見るように経営が変わることで、赤字を垂れ流していた企業が同じ企業と思えないほど筋肉質に変身した例もあれば、日本電産やダイキンのように、円高を活かして海外企業を積極的に買収し、大胆に世界戦略を強化している企業、またソフトバンクの電撃的なEアクセスの買収など、時代変化に機敏に対応する企業もあります。また同じように本業にデジタル化の衝撃を受けたコダックは壊滅的な打擊を被り、富士フイルムは事業構造の再編んに成功してきています。違いは、そういった積極的にリスクを取ることをやっている企業経営者のほとんどは、創業者であったり、カリスマ型で強いリーダーシップのとれる人材だということです。
政治の世界でも、日本の経済の好転には日銀により積極的に金融緩和させることだと喧伝したり、外債を買えばなんとか円高から状況を変えることができるという根拠の薄い主張が見られますが、日本の産業や産業のあり方、また経営のあり方が、今日の世界の変化に適応できなくなったことは指摘しません。
経済界を敵には回したくないということでしょうか。慢性病にかかっている患者に金融政策のカンフル剤を打っても効かないのです。お金が回らないことが問題なのに、お金を供給しても死蔵されるだけです。少なくとも今までがそうでした。さらに円高に対して日銀の外債購入というウルトラ手段を行なっても、池田信夫さんや小幡績さんがご指摘のように効果があるとは到底思えません。
日銀の外債購入は意味があるか : アゴラ – ライブドアブログ :
中央銀行の政策について整理する 番外編 日銀の外債購入 : アゴラ – ライブドアブログ :
日本が一国で為替を操作しようとしても、為替取引の規模から言っても、そうそううまくいくものではありません。安倍総裁が国際協調で円高を克服するとおっしゃっていましたが、ほんとうに可能なのかお手並みを拝見と引いてしまいます。
財政赤字で溺れかけている政府に頼ってどうするのだろうか、もっとまずは自力でなんとか将来を切り拓いていくことではないかと感じるのです。
そういえば、アメリカの産業が日本の製造業に壊滅的な打擊を被った後にアメリカの産業が立ち直っていく過程で、出てきた本のなかに、無から有を生み出す起業家精神や前者一丸でチャレンジする、つまりアクティブにリスクをテイクすることの大切さを説いたダニエル・ケラーの「経営はARTだ!」とか、トム・ピーターズの「トム・ピーターズの経営破壊」で経営はクレージーでなければならないなどの主張がでてきて、アメリカの産業界をずいぶん元気づけたと思います。しかし日本の多くの企業は、モノづくりの時代の経営から変われなかったのです。
集団主義、タテ型の秩序、ムラ社会化、出る杭を打つ風土からは、時代の大きな変化に対するチャレンジ精神は生まれてきません。それは、バブル崩壊以降に続いている日本の停滞がなにより証明しています。そして未だに経済対策、公共事業を求める声が絶えないのです。ウッドフォード元CEOから見れば、日本企業のこんな不思議さは理解できず、根本的な改革が求められていると見えているようです。
日本はいくつかの点で、ほとんど共産主義のようだ。日本企業を見ていると、北朝鮮の状況を思い出させる。強大な権力を握った年寄りが支配し、誰もトップに異を唱えず、メンツを保つことばかり気にしている。そんな日本は奇妙に映る。
ウッドフォード元CEOは「フクシマ」が、国民の怒りによって、日本の社会に変革を起こすだろうと期待したにもかかわらず、変わらなかったことに失望感を抱いているようです。しかし、今回の尖閣の問題から日中の経済関係にも大きな溝が生まれました。それは、日本の経済にも、企業の業績にも大きな影響が生まれます。地理的に売り先を広げるという戦略が大きく挫折するわけで、製造拠点はASEANに移したとしても、新たな市場づくりの戦略が求められてきます。
地理的に売り先が広げることに限界があるのなら、事業の高付加価値化をはかるか、先進国間の競争でも勝てる優位性を生み出す戦略が必要になってくるはずです。そのチャンスを生かす機運が生まれてくることを期待したいものです。
政治も、与野党で互いに能力の欠陥さがし、権力の維持と奪取で暇人としか思えないゲームを繰り返すのではなく、どうすれば日本が変われるかの構想力で競い合ってもらいたいものです。ほんとうに「目覚めよ ジャパン」です。それも他力本願ではなく、ひとりひとりが、何か明日に向かってチャレンジを始めることから始まるのだと思います。