田村秀男氏の間抜けな「どマクロ」経済学

池田 信夫

リフレ派の間抜けな言説は枚挙にいとまがないが、きのうの産経新聞の田村秀男氏のコラムは、ネタかと思ってしまった。彼は日銀の包括緩和をこう批判する。

外国の投資は減り始めても日銀の国債買いが増えると勢いを取り戻す。理由は簡単、日銀の国債買いは国債相場を押し上げる。外国の投資ファンドは安心して国債を買える。そして円高と国債価格上昇の両面でもうける。こうして日銀の資産買い入れ枠追加は円買いの材料と市場で受け取られる。今年初めから外国投資は減り始め、円相場も3月まで下落したが、翌月からは日銀の国債買い増加に合わせて円高に反転している。


おっしゃる通り。日銀の国債購入は邦銀の国債投資の利益を保証して国債バブルを膨張させ、外人の円買いを誘って円高の原因になっているというのは、マーケットの常識だ。この論理的帰結は、日銀が国債購入をやめるべきだということになる。

ところが田村氏はなんと「日銀に包括緩和政策を破棄させ、米欧に負けないほどの明確で大胆な量的緩和政策に踏み切らせろ」というのだ。日銀の包括緩和には量的緩和が含まれており、FRBのQE3の大部分は国債購入である。両者は同じものだが、リフレ派の脳内ではアメリカの量的緩和は日本とは違ってききめがあるらしい。「原発の放射線は自然放射線とは違う」という反原発派みたいなものだ。

田村氏にも「非不胎化介入」の意味を理解していない高橋洋一氏にも共通なのは、金融政策とは金利調整だという事実を理解していないことだ。彼らが依拠しているのは、マネタリーベースが増えると物価が上がるという19世紀の貨幣数量説で、資金需給が金利で動学的に調整されるという現代のマクロ経済学を理解していない。

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