きのうのブログ記事に池尾さんからコメントをいただいたので、常識的なことを補足しておきます。
塩崎氏の定義が間違っていると書いたのは、彼が自然利子率を名目金利と書いているからです。名目金利=実質金利+予想インフレ率だから日銀が操作できますが、ヴィクセルの自然利子率は潜在成長率で決まる均衡実質金利なので、中央銀行にとっては所与の条件です。
重箱モードに見えるかもしれませんが、これは重要なポイントです。リフレ派の混乱の最大の原因は、政府の仕事と日銀の仕事を混同することにあるからです。池尾さんの記事にもあるように、成長率を上げることが日銀の仕事であるかのように書いている塩崎氏の議論は明白な誤りです。
中央銀行の目的は物価の安定であり、アメリカ以外の国では雇用の安定は含まれていません。これは金融政策で景気を持続的に改善することはできないという事実にもとづいています。これがフリードマンがヴィクセルにならって提案した自然失業率の概念です。ましてや日銀が成長率を引き上げることができるはずがない。
ただ塩崎氏が自然水準の概念を持ち出したのは、リフレ派に比べて一歩前進です。中央銀行の仕事は景気変動を安定化して自然水準に近づけることであり、自然水準そのものを改善するのは政府の仕事です。彼もいうように「前回の安倍政権では日本経済の構造改革を推し進めることで、日経平均株価は1万4,000円台から1万8,000円台に上昇、税収も51兆円まで増えた」。これが政府のやるべきことです。
といっても「成長戦略」の類には大した効果はないが、政府が経済を歪めているのを是正することは効果があります。特に重要なのは税制です。塩崎氏のいう「法人税等ゼロ特区」は、成長率を引き上げる効果があると思われます。大阪市の橋下市長も同様の提案をしているので、これを自民党の政策に掲げてはどうでしょうか。