衝撃的だったパナソニックの2013年3月期の連結決算予想発表。昨年の7721億円の赤字からいくらなんでも今年はプラスかそれに近い回復をするだろうと期待していたところ、今期も7650億円の赤字になるとしました。
今期をまだ半年残している状態ですから内容を吟味しなくてはいけませんが、昨年より赤字が増えることも想定しなくてはいけないこともありえます。「破壊と創造」の中村邦夫氏が同社の指揮をとった時、大幅な赤字を計上したもののその翌年に見事なV字回復を図り、「さすがパナソニック、さすが中村邦夫」と思われたものです。
では現経営陣の能力が劣るのかといえばそうかも知れないしそうではないのかもしれません。
話題のシャープ。昨年の3760億円の赤字に続き今期も3000億円近い赤字が出るのではないかと見る向きが増えています。本日、11月1日の午後に第2四半期の決算発表があり、その際に13年3月期予想が出るものと思われますが、同日に行われるソニーの発表と共に下方修正するのではないかという声が出てきています。
仮に御三家(ソニー、パナ、シャープ)が昨年の大赤字に次ぎ、今期もほとんど回復することなく、同様の赤字決算をするならばV字回復を遂げてきた日本家電の歴史認識は大きく変化せざるを得ません。
大赤字を計上する意味は過剰に積み上がった在庫の処分からリストラの追加費用までいわゆる「過去のお荷物」を大掃除することであります。これは金融機関と二人三脚のもと、ここまで掃除をすれば来年は身軽だから大丈夫、というシナリオをある程度描いた上で掃除の範囲を設定するはずです。
そして、過去はV字回復が機能していたもののいまや、2年以上連続するのが当たり前になるかもしれないという恐怖であります。考えてみればソニーはテレビ部門で8年も赤字を続けているわけで何時までたっても回復しないサイクルに既に入っていたと考えるべきでした。ですが、さすが「大掃除」をすると決算特有の数字の動きがありますので経理マジックも含め論理的にはリバウンドしやすいはずなのです。
では、なぜ、V字回復が出来ないのでしょうか? 藤巻健史氏は円高が全てであるといったご意見のようですが、私はビジネスがそんな簡単なシナリオではないと考えています。
日本製家電が北米市場から少しずつその存在感を薄くしてきたのは昨日、今日ではないのです。しかし、じわじわとボディブローのように効いてくる影響はわかりにくいものです。なぜ、ボディブローかといえば日本企業は売り上げが下がれば努力するため、売り上げ減少幅を最小限に「食い止めてしまう」のです。つまり、逆説的ですが、そこで本当の問題点を発見しにくくしてしまっているのです。
私が指摘する日本家電の最大の問題点はマーケティングに尽きると思います。メディアを通したアプローチ、商品のデザイン、欲しいと思わせるテイスト、商品開発全てにおいて日本の家電はアウトスタンディングにならないのです。
日本の方にこのような手厳しいことを書くのは苦しいのですが、私が海外で公平な目でみると家電はサムスンの方がよく見えるのです。そして、企業イメージ作りも上手だと思います。アップルとの戦いなどはサムスンがアップルと戦えるほどの力をつけたという格好の宣伝となったのです。
では回復できるのか、といえばなくはないと思いますが、V字はないかもしれません。ましてやパナソニックの津賀一宏社長は今後、売り上げよりキャッシュフローの回復に努めるとコメントしております。これは完全なる守りの経営です。それが正しいのか市場が判断することになるでしょう。
ところでソニーの平井社長は着任時、医療部門をソニーの収益の柱の一つに育て上げるようなことを述べられ、苦労してオリンパスとの提携による医療分野への進出を果たしたわけですが、これは花咲かないような気がします。オリンパスの企業体質は閉鎖的でソニーには体質が合わないような気がいたします。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年11月1日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。