大阪府市の特別顧問だった飯田哲也氏が日本未来の党に寝返り、橋下徹氏が彼を強く批判している。これに対して古賀茂明氏は、橋下氏をこう批判している。
間違えたということはよくお分かりだと思います。理念も政策も違う石原さんや旧たちあがれ日本の老人たちと決別してください。そして、みんなの党と選挙協力をやり直してください。そうすれば、国民は付いて来ます。
橋下氏はこう答えた。
古賀さん、政治の場はやるかやられるか、生きるか死ぬかです。勝たなければ自分の思いを実行できないのです。飯田さんが当事者となり、維新批判をする以上、僕は徹底して応戦しなければなりません。ご理解を。
争点は、維新の会が石原氏と合流して「原発ゼロ」という公約を下ろしたことだ。橋下氏は去年の夏には過激な「脱原発」を主張し、その方針にそって飯田氏や古賀氏を中心とするエネルギー戦略会議をつくった。古賀氏は、経産省にいたときは反原発派ではなかったが、飯田氏に影響されて原発ゼロを主張し始めた。
それは当時の感情としてはやむをえない。チェルノブイリ事故のあと、ヨーロッパで反原発運動が起こったのと同じだ。「全欧で数十万人が死亡する」という流言蜚語が流され、各国で原発廃止が政治の争点になった。しかし25年後に国連の調査で確認された死者は、消火作業員など60人程度である。福島事故についてのWHOの報告書でも、癌死亡率は上がらないだろうと予測している。
要するに、原発事故は人々が恐れていたようなハルマゲドンではなかったのだ。だからそのリスクは、通常のプラントと同じように費用/便益で考えるべきだ。市場にまかせれば原発は自然に減ってゆくが、エネルギー全体のコストを考えたとき、原子力をゼロにすると大気汚染や気候変動などのリスクが大きくなる。
このトレードオフの中で最適解がどこにあるかを考え、全体戦略を立てることがリーダーの仕事だ。エネルギーの96%を輸入に頼っている日本が、これ以上化石燃料への依存度を高めることは、エネルギー安全保障からも環境政策からも好ましくない。世界的にみても、オバマ政権のように脱化石燃料がエネルギー政策の方向だ。
橋下氏もいうように原子力に敏感な国民感情に配慮する必要はあるが、プルトニウム管理の観点から考えても、原発ゼロはありえない。こうした問題をごまかして「10年かけて考える」などという曖昧な公約を出している自民党より、原発ゼロを撤回して「原発を減らす工程表」を考える橋下氏のほうがずっとまともだ。間違えたのは古賀氏のほうである。