トンネル崩落事故から老朽インフラのメンテを考える --- 岡本 裕明

アゴラ

「過去に聞いたことがない」と専門家も首をかしげる笹子トンネルの事故はまだ、犠牲者、被害状況すら判明していません。しかし、ボルトなどの部品交換はしていなかった状態で35年も放置したわけですから、起こるべくして起きたともいえるのかもしれません。


公共施設の事故で私がぱっと思い起こしたのは2007年にアメリカ ミネアポリスで起きた橋の崩落事故で車が60台ぐらい川に転落したことでしょうか? この橋も出来てから40年しか経っておらず、構造欠陥と指摘されていますが、アメリカにはそのような橋が7万箇所以上あるといわれています。

アメリカも公共事業への予算は厳しく節約されていますし、日本も折からの財政難で公共事業への予算もどんどん減らされています。一方、1964年の東京オリンピックに向けてインフラ整備が急ピッチに進み、その後も田中内閣の日本列島改造論やらその後のバブル経済を通じてハコモノは急速に増えていきました。

ところが日本は建造物に対して予防的措置のとり方が甘い気がいたします。問題が発生するまで放置し、今回のトンネル崩落事故を受けて全国の釣り型天井構造のトンネルの一斉緊急点検が指示されました。勿論、予算が厳しいのはわかっていますが、どういう状態の時にどういうことが起きるというのは専門家ならばある程度想定できるはずなのです。以前、首都高速道路でも老朽化による事故があり、緊急対策をしました。

今回はトンネルですが、日本はインフラの塊です。複雑な鉄道網、道路網から港湾、空港、ダム、河川などなどきりがありません。安倍総裁が国土強靭化政策を発表していますが、これは巨大災害による被害を最小限に食い止めるということだったと認識しています。ですが、今回の事故のように何もなくても大災害に繋がるインフラのメンテナンスの弱さというのは日本の古くなりつつあるインフラの大規模補修、補強、ないし作り変えなどを通じてある程度の財源確保と予算化を進め日本の資産を守るという意味で必要な出費ではないかと考えています。

財源の建設国債については批判も多いとは思いますが、考え方として日本という国が建設国債を通じてインフラという資産を作り上げたとすれば日本国の会計上の価値は上がっているともいえるのです。つまり、企業が借金をして資産を買ったという考え方と一緒です。ならば、その資産価値が下がらないよう、一定の予算措置を施すのはごく自然なことであり、巷に言う財政赤字の問題とひとくくりにするのはやや、強引過ぎる気もします。

日本のハコモノの多さ、複雑さは他国を凌駕しています。だからこそ、これを機会にもっと安全ということに気を配る余裕が欲しいものです。

今日はこのぐらいにしておきましょうか?


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年12月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。