頼みの日米関係も強化できるか?
第一期安倍政権で首相の最初の訪問先は中国であった。当時から右寄りだった安倍氏だが就任時には中国に配慮した。靖国参拝を続けた小泉氏に懲りた中国も「日中の緊張関係」を緩和したいと安倍氏を歓迎した。あれから6年。GDPで日本を抜き去り自信をつけ、アメリカの国際的影響力低下を受けて、中国の安倍氏に対する対応は大きく変わると思う。そこが第二期安倍政権の最初のリスクだと思う。
第二期安倍政権の最初の訪問国はアメリカとなるようだ。民主党政権でダメージを受けた日米関係の再構築が目的であろう。台頭を続ける中国に対抗するためにも、日米関係強化は望ましいだろう。
問題は当の日中関係がどうなるかである。右寄りで領土問題でも強硬な姿勢を見せる安倍氏だが、領土問題で経済的打撃を受けた財界に配慮して、中国には慎重に対応するとみられる。これも賢明な対応だと思う。中国経済は立ち直りを見せており、今後二年間は8%を超える成長が見込まれる。財界にとっては相変わらず宝の山だ。
私はいくら安倍首相が中国に敬意を払い、安全運転的外交を心掛けても中国はそれに答えない可能性があるとみる。習近平、李克強体制がどんな外交を展開するのか?いまだ新体制による明確な方針は見えないが、傾向が読み取れるサインはある。それは先の総選挙期間中も航空機を尖閣諸島領空内に飛ばしていたことだ。あきらかに日本を挑発している。
中国はアメリカの国際的影響力の低下もカウントし始めている。OECDは先月、中国が4年以内に購買力平価(PPP)ベースで米国を追い抜くという見通しを発表した。有能で行動力があり、ファーストレディとしても外交的資産と経験を持っていたヒラリー・クリントン女史が国務長官を辞し、後任が外交経験がないケリー上院議員となる。これもアメリカの外交がさらに国際的関与を減らすサインと読める。オバマは外交力あるものの共和党が不人気なライス国連大使ではなく、共和党受けするケリーを選んだ。財政の崖回避のために外交を犠牲にしたともいえる。
ワシントンの識者の中には「得意の脅迫的二国間外交を展開し、中国は自国主導の経済連携を周辺国と進めていくのではないか」というものの少なくない。韓国、台湾、東南アジアがあれば日本はいらないとの見方だ。これらの国経由で日本の技術やノウハウも手に入ると思っているとの分析もある。よりアメリカ寄りになる日本を分断するために挑発しているのかもしれない。
これに対抗するにはアメリカの関係強化しかないが、そのために日本が舵をさらに切ることができるか?米軍基地問題やTPPでアメリカに協力できるだろうか?大勝した自民党でも、いやそれらに反対して当選した議員を多く抱える自民党だからこそ難しいかもしれない。国内問題が外交の足を引っ張る傾向が日米ともに見らえる。そこまで見越した中国はさらに挑発してくる可能性がある