マイナス金利の提案

池田 信夫


きのうのニコ生アゴラは、田原さんの自由奔放な質問に深尾光洋さんと土居丈朗さんがちょっと戸惑っていたので、簡単に補足しておこう。


きっかけはきのう発表された補正予算の話だが、これはニューズウィークにも書いたように、10兆円のバラマキ以上でも以下でもない。安倍首相のいうようにGDPの2%分の効果はあるだろうが、これは乗数効果が1だということで、バラマキが終わったら元の木阿弥だ。

問題は21日に決まるといわれる日銀のインフレ目標2%だが、これには深尾さんも土居さんも否定的だった。特に日銀出身の深尾さんは「2%のインフレにするには4~5%の成長率が必要で、日本では不可能だ」と言っていた。首相が日銀法改正を脅しに使うのも常軌を逸しており、それに屈服した日銀もよくない。

どうやってインフレにするかも問題で、深尾さんは「普通の量的緩和では無理だ。円安誘導しかないが、それは日米問題になりかねない」という。安倍氏が訪米できない背景には、こういう問題もあるようだ。田原さんは「円安やTPPで日米関係がおかしくなっている」と言っていた。

「アベノミックス」と「アソウノミックス」が微妙にずれているのも気になるところだ。補正予算には安倍首相の意向はあまり反映されていなくて、よくも悪くも在来型のバラマキ予算だ。夏の参院選までは景気が上向くだろうが、そのあとはわからない。土居さんは「単なる来年度予算の先食いで、中身もまったく新味がない」と酷評していた。

深尾さんの預金課税の提案に田原さんが強い関心をもち、視聴者アンケートをとったところ、結果は意外にも47%が賛成だった。これは理論的には合理的なマイナス金利で、ケインズも提案した由緒ある政策だ。深尾さんが10年前から提案しているが、誰も相手にしない。

しかし通貨を電子マネーにすれば、マイナス金利は技術的には容易だ。最近では、Miles Kimballも提案している。金の流れがガラス張りになるので政治的にはきわめて困難だが、安倍首相もマイナス金利には興味をもっているようなので、財務省も検討してはどうだろうか。