平成25年1月15日に公共事業を中心に投資や消費を喚起し、経済成長につなげる施策を行うというコンセプトのもと、総額13兆1千億円の大規模財政出動を伴う平成24年度補正予算(緊急経済対策)が閣議決定された。
文部科学省の補正予算についてみると全般的に、施設整備、設備整備が中心のいわゆる自民党政権のばら撒き色が否めない。
特定の業界が対象とはいえ、その業界が潤い、雇用が創出され、消費が活発化されれば、もちろん緊急経済対策としての意味はあるのだろうが……。
具体例で見てみると、補正予算は「復興・防災対策」、「成長による富の創出」、「暮らしの安心・地域活性化」の大きく三つの分野に分かれているのだが、
「成長による富の創出」の中に以下がある。
スポーツの競技力向上に向けた環境整備(日本スポーツ振興センターへの出資など)
2020年オリンピック・パラリンピック東京招致等や今後の国立競技場の在り方を見据えた日本スポーツ振興センターの財政基盤の強化のための出資及び国立代々木競技場内部改修等
オリンピック・パラリンピック招致期待による経済効果で、「成長による富が創出」されるということなのだろうか。はたまた、東京でのオリンピック・パラリンピックを観戦することで刺激を受けた国民が消費を増やし、成長による富の創出がなされるということなのか。
ラグビーファンとしては2019年ワールドカップ日本開催に向けて、国立代々木競技場の改修は大変嬉しいのだが……元総理の森喜朗氏の院政はまだ続いてるのだろうか。
「風が吹けば桶屋が儲かる」ではないが、どちらにしろスポーツの競技力向上に向けた環境整備が、緊急経済対策の「成長による富の創出」に繋がるとは思えない。
また、「暮らしの安心・地域活性化」の中に以下がある。
「心のノート」活用推進事業
道徳教育の充実を図るため、「心のノート」(25年度使用分)を全ての小・中学生に配布・活用
この事業は、民主党政権の際に事業仕分けにあったが自民党政権により復活した。
これは、緊急経済対策とどのように関連があるのであろうか。
私は個々事業の是非について異論を唱えるつもりはないが、これらの事業が、緊急経済対策というコンセンプトのもとに行う事業として適しているかについては疑問を感じざるをえない。
民主党政権時代に、震災復興目的予算が沖縄の道路整備などの被災地に直接関係ない事業に使用されるなどして物議を呼んだが、今回の緊急経済対策の補正予算も同じことではないか。
補正予算というものは額が決まった上で、後付けで事業をはめ込んでいくからそういうものだと言えばそれまでなのだが、自民党の政治主導により、素人がみてもわかるような論理破綻した補正予算を組まされる官僚の人々に同情せざるをえない。
林 良知
大学職員