出生率激減にみる中国の限界 --- 岡本 裕明

アゴラ

1月7日号の日経ビジネスに中国の出生率が極端に低いという衝撃的記事が掲載されています。それが本当なら中国経済と中国の立ち位置については長期的に大きく見方が変わるかもしれません。

記事は津上俊哉氏という現代中国研究家が寄稿したもので日経ビジネスのトップページを飾っています。氏の指摘する中国の合計特殊出生率は本来「正」とされていた1.8ではなく、わずか1.18だというのです。また2011年、中国国家統計局は生産年齢人口の総人口に占める割合が史上初めて減少に転じた、と発表しているそうです。


まず、合計特殊出生率が1.18というのは主要国では最低水準で低いといわれる韓国やシンガポールをも抜き去る低さということになります。日本などはまだまだ高いほう、ということになってしまいます。

なぜ、そうなったかといえば中国の二つの特殊性がそうさせたと思います。

ひとつは記事にも指摘されているように1979年から始まった一人っ子政策が長く続いていること。これは今でも原則継続されているわけで政府の施策として人口を抑制させようとしています。79年からですから今、その第一期の人は既に34歳になっています。人口ピラミッドを見ると確かにその時代からピラミッドは狭くなる(=人口層が減少に転じている)のがよくわかります。そして、それは加速しているようにも見えます。

二つ目は極端な男女比の悪化。中国はもともと男の子を大事にするため、女子が生まれたら里子に出してしまうなどかなり無謀なこともそれなりに行われていたようです。おまけに一人っ子政策ですから結果として「正規の」男性の比率が大きくなり、このところ改善されたとされるものの2011年で男女比はまだ117.76:100になっています。一般的に正常な比率は106~107と言われていますから明らかにまだまだ歪んでいるということです。

このいびつな人口動態は中国当局が今度は簡単に止められなくなっているということもあるかもしれません。

それは都市部の更なる出生率の低下であります。たとえば韓国がなぜ主要国で世界最低水準の出生率かといえば生活水準の向上の結果、若年層が人生をエンジョイし、金銭を自分のために使うようになったため、子孫繁栄のプライオリティが下がったから、とも言われています。

同じことは中国の都市部にも言えるはずです。特に物価高騰が激しい場合、子供を作る余裕がなくなるというのは日本でも同じ経験をしたと思います。香港やシンガポールでは家が極端に狭いため、子供部屋がないという切実なる問題が存在するとすれば中国の場合、不動産バブルが講じた少子化とも言えなくはありません。勿論、韓国ソウルでも同じです。

仮に1.18という数字が極端で、もしも本当はそれより高い水準だったとしても人口が今後、急激に減少していくことは免れないと思います。となれば中国経済は今後、消費の伸びは思ったほど上がらなくなるかもしれません。つまり、中国経済の成長は思った以上に早かったけれど衰退も早くなるというファンダメンタルな要因が存在していることになります。

勿論、この話は短期的には影響がありませんから我々が気にすることはない、と言えばそれまでですが、国家の位置づけという意味では重要な意味をなすと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょうか?


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年1月26日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。