重鎮を配備した安部内閣は、お友達内閣から卒業したと言うのが大方の見方だが、重要政策決定手順の中身が判るにつれ、疑問が湧きだした。
だからと言って「お友達内閣」が悪い訳ではない。
どこの国の指導者も、信頼できる友人のアドヴァイスを重視するのは常識で、問題は「お友達の質」と「結果責任」である。
報道によると、首相の意思で何人でも任命出来る「内閣官房参与」は、米国のホワイトハウス・スタッフの様に重要政策の決定に閣僚以上の影響力を持つらしい。
その「内閣官房参与」に(1)金融問題 : 浜田宏一エール大学名誉教授と本田悦郎静岡県立大教授(元大蔵官僚)(2)財政経済・社会保障 : 丹呉泰健元財務次官 (3)防災・減災ニューデイール : 藤井聡京大院教授 (4)外交 : 谷内正太郎元外務次官 (5)国民生活の安全・安心:宗像紀夫元名古屋高検検事長 (6)特命 :飯島勲 と言う「ご意見番七人衆」と言われお友達を任命し、方針決定のキーパーソンとしていると言う。
金融政策から「長期目標」を外すほど即効性のある政策で参院選を勝ち抜こうとする安部首相だけあって、この「七人衆」の顔ぶれを見ると殆どが実務者か職人的学者で、高邁な理念に支えられた日本の将来図を期待するのは難しく、「中継ぎ内閣」用人事であろう。
それでも、これまで「自民党」に投票した事の無い私から見ても、安部内閣発足以来の経済・金融・税制・外交などの足取りは、「論議」ばかりで何の対策も取れなかった小泉政権以降の内閣から見れば、大きな進歩である。
今の日本に重要なのは、論議ばかりで何もしないより、間違っても良いから行動する事だ。
海外の論調も、安部内閣発足以来、これまでの「パッシング」に近い日本を小ばかにした態度から、「動き出した日本」として日本を注目し出した。
インフレターゲットを組み込んだ金融政策には、学者や評論家を中心に批判が多い様だが、元々自称「経済金融の権威者」が引き起こした「世界的な経済混乱」を、何一つ解決出来ない連中の言うことなど、一々気にする必要はない。
さて、安部内閣の「屋台骨」は誰が支えているのか? が判る記事が先日の日経新聞に「首相との面会回数」ベストテンとして掲載されていた。
内容をみると、麻生副総理,菅官房長官、甘利経済再生相の3閣僚を除く残りの7人は、全て「霞ヶ関」関係者で、「ご意見番七人衆」も霞ヶ関関係者の上司である筈の「閣僚」もお呼びでないのは、如何にも官僚支配国日本の特殊現象だ。
安部内閣の発足で、「霞ヶ関」は見事に復権し、公共事業を柱とするばらまき「土建国家」への回帰は明白で、更に「中選挙区制」が復活すれば「派閥金権政治」の復活も間違いない。
然し、「霞ヶ関復権」でも「ばら撒き土建国家への回帰」でも、日本が良くなれば問題ないわけだから、暫くは安部内閣に思う通りにやらせてみるべきだろう。
安部内閣の課題は「統治機構改革」と言う「日本病の根本治療」を後回しにして「対症療法」に集中した事だ。これは、次代を背負う日本の若者にとっては極めて憂慮すべき欠点である。
その様な事を考えると、「統治機構の抜本改革」が一丁目一番地の政策であった筈の橋下市長が、安部首相に接近する「変心」振りは心配である。
2013年1月27日
北村隆司