日本のマスメディアの報道姿勢を問う --- 岡本 裕明

アゴラ

安倍首相の進める金融緩和、日銀への積極介入姿勢に対して海外の要人がいろいろコメントしているようですが、往々にして日本のメディアは海外からのボイスについて比較的軽い取り扱いのような気がします。慶弔とか事故については海外からの声も割ときちんと報道しているのですが日本の政策といったようなもっと大きいピクチャーのものについては報道されにくくなっています。「島」の問題でも相手国がなぜそのように主張しているか報道を通じて知っている人は案外少ないでしょう。


多分ですが、記者は、国の方針や政策、プロパガンダに反するまずいことを書けば記者会見室出入り禁止を食らったり、上からの圧力などがでてくることで書きたいことも書けないという体質をずっと続けているのだろうと思います。日本のメディアの体質は政策に対する控えめな書き方のみならず、産業や個別企業のニュースもある程度相手の顔色を伺いながらということになりやすくなっています。これは広告主といったことが影響するわけです。

古い話ですが、第二次世界大戦中、日本の新聞はほとんど、大本営の言いなりの記事を書かされていました。言論の自由などはなく、真実をきちんと知らされない国民は騙され続けました。社会主義や共産主義への流れを止めるためのさまざまな嫌がらせもあったし、戦後でもマッカーサーのレッドバージといった弾圧もあったわけです。

私が学生の頃、新聞の論調に関する講義に接することがあり、新聞社の主義主張などに基づく傾向の違いを学びました。それまでは家で購読していた新聞のニュースを鵜呑みにしていた私にはかなりショックでした。昔からよく言うのがサラリーマンの朝日新聞、自営業の読売新聞。私の実家は読売でした。今では朝のワイドショーなどで新聞各紙の紹介をよくやっていますが、事実だけ捉えるならいまや、どの新聞でもたいした差異はなく、社説やコラムにようやく新聞社の個性が見えたりするぐらいです。

ところが肝心な意見や海外からのコメントなど本来もっと正面から取り上げるべき課題にはどの新聞も触れらなかったり、さらっと流したりして読者に気がつきにくくしたりすることもあります。海外の新聞と比べても論説、コラムは少ないと思います。

私の今日のポイントは情報は各方面から取らないと正しい判断は出来ない、ということです。日本のメディアが「良い子」でいる限り、読者は偏った判断を下すこともありえるのです。ガッツのある方は海外のメディアをインターネットで読めばよいでしょう。各国にはいわゆる高級紙がありますからこちらを原語で直接読むことがベストの選択になります。それが無理、面倒だ、ということになれば統制を受けにくい雑誌とか、ブログがよろしいかと思います。勿論、信憑性の問題はありますが、意見のひとつとして読んでおくには損はないはずです。

例えば、安倍政権の方針は本当に正しいのだろうか、ときちんと報道しているメディアは割と少ないと思います。賛成、反対という短絡的な結論の話ではなく、話の筋道、各方面の意見、選択肢などはもう少し提示してもよいと思いますし、メディアが右寄り、左寄りというより日和見的なところが多いことにやや、閉口するときもあります。

報道もやや、斜めに構えて読むと案外、別の色が見えてくるかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年1月30日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。