矢張り出た! B-787を巡る「日本株式会社」への中傷記事

北村 隆司

私が昨日「アゴラ」に寄稿した「B-787を「準国産」と報道するマスコミの誤解は直ぐ正せ!」の心配が現実のものとなった。

1月26日(土〕のニューヨークタイムズのビジネス欄の一面に出た「ボーイングの為に製造したバッテリーに果たした日本の役割」と言う大きな記事がそれである。


この記事は、「何も証拠はない」「日本は技術的にも優れている」等と「おだてながら」、日本政府〔官庁〕の民間産業への異常に強い影響力や「関係者の阿吽の呼吸で重要事項が決められる日本の特殊事情」を大袈裟に取り上げ、証拠はないが日本企業の部品受注には「WTO規定に違反した疑い」があるかの如く書かれている。

特にこの記事に頻繁に登場するリチャード・アブラフィア氏は、航空機、宇宙産業の有名な評論家であると同時に、日本メーカーの競争相手である欧米のメーカー多数を客に持つ「 Teal Group」と言う、大手のコンサルタント・ロビー企業の副社長でもあり、こちらこそ「証拠はないが、アブラフィア氏の日本への疑問論は、利益相反の疑いが限りなく濃い」と言いたいくらいだ。

この記事は、日本政府の関与の濃さを匂わし「日本メーカーが、不公正競争をしたと言う証拠はないが」と前置きした後で「日本の2大航空会社は、政府の強大な補助を受けており、政府の指導でボーイングに大量発注する代わりに、ボーイングは日本のメーカー製品を採用させる官民一体で動いている」と言う業界通の言葉を引用し、更に「ユアサ」自身も政府から出世払いの低利融資を受けたことを告白していると、悪名高い「日本株式会社」が健在打と伝えている。

更に、各国の航空産業に対する政治の介入は大きく浄化されたが、日本の「官民一体構造」は民間航空産業に関するWTO規則に違反しており、米国下院の調査が行なわれる可能性があると報じている。

この記事が「日本黒」の疑いとして何度も触れているのが、「陰に日向に航空産業に関与」している日本政府が自ら残した状況証拠である。

その中には、昨年7月に日本政府が発表した「日本再生計画」も挙げられている。

B-787を「準国産」と呼ぶことも誤解の元だが、欧米の政府が「黒子」に徹して民間産業を支援するのと異なり、日本政府は大した事もないのに「透明性」を利用して自己の存在をアピールする宣伝が、欧米の狡猾なロビーストの餌食になっている事を認識すべきであろう。

経産省がこの記事にどのような抗議をするのかが楽しみだが、「人の噂も75日」とばかり、黙認して終わる事が心配だ。

2013年1月27日
北村 隆司