小学生のみなさんはお金を借りたことがないと思いますが、日本ではお金を借りて新しい仕事をする人が増えないので、デフレが10年以上つづいています。安倍首相は日本銀行に「輪転機をぐるぐる回してもっとお金を刷れ」といっていますが、日銀がお金を印刷したら、デフレは止まるんでしょうか?
日銀はみなさんに直接お金を貸してくれません。お金を貸してほしいと思ったら銀行に行き、銀行はお金を日銀から借りるのです。このとき、日銀から借りたお金に何%か金利を乗せて返すことになっています。これを政策金利といいますが、今はほとんどゼロです。これをゼロ金利といいます。
昔は長期金利(10年もの国債などの金利)が8%ということもあったのですが、このごろ会社が金を借りなくなったので、金利が下がったのです。これはちょっとむずかしいと思いますが、景気のいいときは8%の金利で借りても10%の利益が出たらもうかりますが、景気が悪くなって7%しかもうからないと8%で借りる会社はなくなります。借りる会社が減ると金利が下がるのです。
金利というとわかりにくいので、バナナで考えましょう。1ふさ300円ぐらいしたバナナが、すごい豊作でどんどんお店に並んだとします。いくらバナナの好きな人でも、1日に何十本も食べられないので、バナナの値段は下がります。とうとうバナナが余って値段がゼロになったとしましょう。
ここでバナナをもっとお店に並べると何がおこるでしょうか。何もおこりません。バナナの値段がゼロだということは、みんなおなかいっぱいになって「バナナなんか見るのもいやだ」と思っているということなので、いくらタダでも買わないのです。
同じことが金利にもいえます。金利は「お金の値段」ですから、今のように金利がゼロになっているということは、会社が「もうお金が余って借りる必要はありません」といっているのと同じなのです。ここで日銀が無理やりお金を貸すのを、むずかしいことばで量的緩和というのですが、これはバナナの押し売りみたいなものです。
マネタリーベース(赤)と消費者物価(青)の前年比増加率(%)
商売をやった人ならわかると思いますが、今「お金が足りなくて商売ができない」という会社はありません。お金はジャブジャブに余っていて、日本の会社の預金は借金より多いのです。問題はもうかる仕事がないことなので、これ以上お金を増やしてもデフレは止まりません。
安倍さんはお金を貸す側から見ているのでしょうが、借りる立場から見ると日銀と銀行の間でお金がどう動いたって関係ありません。いくらお金があっても、借りる人がいないとお金は動かないのです。たぶんお坊ちゃまの安倍さんも、お金を借りたことがないのだと思います。よい子は、よく知らないことに口を出すのはやめましょう。