追い出し部屋と、就活、体罰について

生島 勘富

城 繁幸 氏の 追い出し部屋は永遠に不滅です を拝読して、もうすこし体罰もろもろについて。


■追い出し部屋は陰湿か?

少し引用。

40代後半で、在籍する事業部があまりパッとしない人の手元に、ある日、聞いたことのない部署への異動の辞令がやってくる。

== 中略 ==

「なんでおまえは毎回毎回不合格になるのか分かっているのか」
「二十年以上働いてきて、男として恥ずかしくないのか」

ねちねちねちねちイビられ続け、転職先が決まっていなくても
「多少の割増退職金が貰えるうちに自己都合で退職しようか」
となってしまう。

私はサラリーマン経験がほとんどないので、「追い出し部屋」など想像もつかないのですが、読むだけで、同世代として精神的に「相当苦しいだろうな」とは思います。
しかし、会社が、会社にとって必要ない人に対して、何ヶ月も掛けて再就職のお手伝いをしてくれるわけで、陰湿どころかとんでもなく甘い、実に浪花節ですね。

■合格(入社)至上主義

就活にも対策本が沢山あるようです。

SPI対策本

こんな対策本をやっている(やる必要がある)時点で、もう要らない人とも言えるのですが、こんなに大量に出版されるほど需要があるわけです。
※弊社には選べるほど入社希望者は来ないので一般論です(苦笑)。

私が人事担当だったら対策本をやってきた人を、まず、バッサリ切るけど……。
SPI試験で足切りをして、残った人から、対策本などで点数を取ったであろう(なかったら点を取れてないであろう)人を選別して切っていくのでしょう。

大学もSPI対策講座を開いているようで、京大までやっているとは……。

大学は、企業がどんな人を欲しいと思っているか分かってないのか、そうは言ってもSPI試験で落とされては意味がないと考えるのか、私には分かりませんが、とにかく合格させて就職率を上げあければ大学も生き残れない。という切実さだけは理解できます。

SPI対策をやって仮に入社できたとしても、入社後、余程努力しない限り、そのほとんどの人が40代(30代)になれば「『追い出し部屋』に入ることになるだろう」ということは簡単に予想が付きます。尤も、その頃、「追い出し部屋」のようなウェットな仕組みが残っているかは微妙ですが(「永遠」は語呂が良かっただけですよね……)。

合格(入社)することが目的になっている人は、企業にとっては最も要らない人ですから、大学は、合格至上主義を止めて、もっと本質的なことを教えて欲しいです。

■スポーツにおける体罰はSPI対策や受験勉強よりマシ

SPI試験の問題を見れば分かりますが、基本的に小学校~高校レベルの問題。
これを受験勉強を勝ち抜いてきた大学生に、もう一度、対策を施さないと行けないというのは、受験勉強が如何に役に立たないかの証明です。

もちろん、SPI試験で満点を取って企業に入っても、その能力自体は実際の業務に何の価値もないことは、誰の目にも明らかでしょう。大量の人の能力を推し量る上で、最低限の足切りとして利用しているに過ぎません。その最低限の足切りの対策をしなければならない人を、見かけだけでも合格点まで引き上げるのが、SPI対策であり、受験(テクニック)勉強です。

合格至上主義からでた産物と言えるでしょう。
同様に、スポーツにおける体罰は、勝利至上主義からできた産物です。

しかし、何の役にも立たないSPI対策や、受験勉強よりは遙かにマシで、体罰によってやろうが、自主的にやろうが、同じように練習をすれば、体を動かした分、ほぼ同じようにスポーツの能力は上がります。(ただし、技術が上がるわけではないし、技術を上げるためにやるのではない)

前述の通り、私が選べるほどの立場(会社)の人事担当ならば、SPI対策をしなければならない人は「何とかして避けたい」と思って面接に臨みます。
受験テクニック(勉強)やSPI対策などだけを真面目にやってきた人には、残念ながら価値はありません。

一方で、私がプロスポーツのスカウトだとしたら、「体罰がないと自主的に練習ができない」かどうかは気にしません。体罰で能力に下駄を履いても、その能力は落ちないからです。

つまり、どちらに価値があるかというと体罰の方です。

■ドライになるなら大人から

生活指導(悪事)に対する体罰もなくすべきで、体罰が必要なら、停学・退学・警察の介入となるそうですが、とんでもなくドライな社会ですね。
退学になった子、警察に補導・逮捕された子は、その後、どうなるのでしょう?
私には教育の放棄としか思えません

スポーツに於ける体罰についてイロイロ書いてきましたが、「体罰がなければできないような人は切れば良い」という意見を多く頂戴致しました。
実にドライですね。

しかし、同じ人が、「会社の利益に貢献できてない人は、『追い出し部屋』のような甘いことは止めて、さっさと解雇すれば良い」と言ってるとは思えないのです。

「会社の利益に貢献できてない日本人」が、仮に選べるなら、

  即解雇 > 追い出し部屋でいびられる > 坊主にする・殴られる

の順に厳しい処分と感じるんじゃないでしょうか?
ちなみに、私だったら解雇を選びますけど。
(どれも嫌とかいう子供みたいな人も多そうですが)日本はそういう文化圏だと思います。

なぜ、半人前の子供には「退学」など、一番重い処分なのでしょう?

まず、大人からドライな対応に慣れるべきじゃないでしょうか?そして、日本がそういうドライな文化圏になるなら、子供にも適応すれば良いのです。

■体罰を研究すべき

私は、子供の頃、散々体罰を受けてきましたが(今の基準では虐待でしょう)、幸いなことに体罰を受けた恨みはないです。それは、私が体罰を受けたときは「悪いことをしたから、サボっていたから」と自分自身で「後ろめたさ」を認識していたためです。

体罰は恐怖による支配ではなく、「後ろめたさ」を増幅させる行為でなくてはいけませんが、こうまで体罰を受けたことを恨んでいる人が存在するのは、「恐怖による支配」のために使う人や、自分自身の憂さ晴らしに使う人が多いからでしょう。

教育業界では、「分数の教え方」でも未だに研究を続けています。しかし、体罰は事実として存在しているのに、「どうなくすかの議論」はされていても、「体罰をどのようにやるべきか」は、議論も研究もされていません。
ですから、正しく継承されず、常に自己流で、「体罰とは『恐怖による支配』である」と考える人が後を絶ちません。

しかし、体罰は決して「恐怖による支配」を目的に行うことではないのです。

「追い出し部屋」を創ってしまう日本文化圏では、体罰はなくせません。それを無理になくせば学校での体罰が「追い出し部屋」のようなものに変わる可能性すらあります(変わるでしょう)。
その方が、悲劇は確実に増えます。
精神を攻撃される方が、体罰を受けるより何倍も苦しいのです。

欧米は関係ない。日本は日本に合った教育が必ずあるはずです。
逆に、大人に対しては、もう少し大人の対応ができるように、解雇規制を撤廃した方が良いのではないでしょうか。

株式会社ジーワンシステム
生島 勘富
mail:info@g1sys.co.jp
Twitter:@kantomi

■ 追記

もし、就活生の皆さんがご覧になっていたら、今から、本質的なスキルを上げることは間に合いませんから、SPI対策は十分にやってください。
見事、入社できましたら、「自分の人生に必要なスキルとは何か?」ということを意識して、サラリーマン人生を送って頂ければと思います。