日本に観光客をもっと呼び込むために考えるべきこと --- 岡本 裕明

アゴラ

バンクーバーでこの一月ほど耳にたこが出来るほどラジオを通じて聞こえてくる2 days in Seattle(「シアトルで二日間を」)の宣伝。これはシアトルのマーケティング非営利団体が50年以上続けている活動です。ウェブサイトのトップページはレストランやカフェ、ホテルから観光地までたのしそうな写真がなかなかセンスのよいデザインで収まっています。なぜ2日かといえばシアトル観光なら週末など2日間がもっとも手ごろな日数で我々バンクーバーに住んでいる者からすればそれを年に数回行ければよいな、というイメージだと思います。


正直、非常にうまいと思います。私も釣られて行きたくなります。

ここバンクーバー。観光業はローカル経済の中でも非常に重要な位置づけだと思うのですが進歩がない気がします。2010年の冬季オリンピックの際、市内のインフラはだいぶ充実させましたが、私にはイマジネーションが足りない気がします。ここも地元政府主導でそれなりの施設への投資はしているようですが、投資をすることで満足している気がしないでもありません。

例えば観光客の立場からバンクーバーで何をしたいか、と考えた時、私ならば、
水上飛行機でウィスラーの上を回ってみたい
コールハーバーから船に乗って2、3時間観光してみたい。
乗馬をしたい。
朝起きてジョギングしたい。
レンタサイクルかレンタバイクでスタンレーパーク以外に行きたい。
スタンレーパークで弁当を食べたい。

がぱっと思いつきます。多分、ほとんどのツアーにはないと思います。朝起きてジョギングしたいというのは欧米の人にも人気があります。しかし、地元の人はどこを走ったらよいか当たり前のように知っているのでそれが分からないと考えないのかもしれません。ですが、初めての人はわからないのです。距離も高低差も分かりません。ジョギングマップはほとんどのホテルに備えていません。

観光業というのはその町に来た人に感動を与えなくてはいけません。そしてまた来たい、と思わせる強烈な印象を持たせないことにはリピーターになりえません。バンクーバーはその点、潜在的素質がたくさんあるのにそれをきちんと引き出していないように思われ、官民とも発想の転換が必要なのかと思います。

今までは観光業というのは地元観光局と旅行会社がクリエートするものでした。ですが、旅行の手配の仕方は明らかに変化しています。いまや、旅行会社に行くという人は相当減っているはずです。その代わり、ウェブを通じて自らが航空券とホテルを手配します。となると観光客を迎え入れるのは誰かといえば旅行会社ではなく、地元のホテル、レストラン、観光施設などそれぞれが個別に対応するすることになるのです。ここが旅行のスタイルの最大の変化ではないでしょか? ならば、私が運営するカフェやホテルの駐車場、更にはマリーナ施設にある観光用商業船だって観光要素が含まれるということなのです。

私は今日の話をバンクーバーとシアトルを例にとり、進めていますが、実はこれは日本にも当てはまると思います。日本に外国人観光客がなぜ伸びないか、それはアピールの仕方が弱いのです。距離的に近いアジアはともかく、欧米からの観光客は比較的決まったところにしか行きません。それは知らない弱みだと考えられないでしょうか? 東京の街とは銀座と秋葉原だけと信じているいる人が案外多いのです。新宿?渋谷?というレベルなのです。

シアトルの非営利団体が外国に向けて発信する観光のマーケティング、実にすばらしい発想だと思います。
こういう新しい考え方を業界は取り入れるべきではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年3月11日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。