次元の違う金融政策とは要は景気刺激策である --- 九条 清隆

アゴラ

黒田新総裁の会見は表情豊かです。市場に語りかける姿勢を感じさせます。その一方で、とことんやる、何でもやるとしている金融政策の具体的な内容は相変わらず見えていません。

次元の違う金融政策とは、ズバリ「期待に働きかける」ということです。デフレの原因を単なる貨幣現象ととらえている経済学者とは確かに次元が違うようです。金融緩和によって物価が上昇するルートは依然としてあいまいなままです。


どう考えてもデフレが、単なる商品や財と貨幣の交換比率の問題だとは思えません。やみくもに貨幣を注入すればそれだけで問題が解決するはずはないと、多くの人は疑っています。デフレは、やはりさまざまな経済の複雑な要因が絡み合った川下の「結果」と考えるほうがすっきり来ます。だからこそ、川上である「期待」に働きかけることが重要なわけです。

つまり、次元の違う金融政策とは、「口先を最大限に使った景気刺激策」ということなのです。

貨幣の量を増やす、物価を上昇させる、何でもやるというのは、すべて演技で、実はどうでもいいのです。景気を刺激することこそが目的なのです。この舞台裏は、なるべく気づかれないほど効果があるわけです。具体的な中身は出してはいけないということです。 したがって、物価上昇率2%というのは目標とみせかけた高度な手段と考えるべきではないでしょうか。

そういう意味では、この次元の違う金融政策は相当これまでうまくいっているといえます。すでに4か月も時間を稼げました。この調子で時間を稼げれば、アベノミクスの1本目の矢としての役割は十分果たしたといえるのではないでしょうか。

物価なんか本当は上がらないほうがいいに決まっています。
ほっておいても消費税が3%上がるのですから。

とにかく、何でもやる、2%は必ず達成する、こういい続けることが実はこの政策の最大のポイントなのです。本音はムリだとわかっていても、それは決して口には出せないのです。

九条清隆
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