TPPは世界経済のブロック化を促進するか? --- 岡本 裕明

アゴラ

日本のTPP交渉参加表明を受け、交渉参加国が日本を「お仲間」にいれるか協議が進んでいます。読売新聞によると11カ国の交渉参加国のうち、メキシコが首脳レベルで支持しているほか、ブルネイ、マレーシア、チリ、ペルー、シンガポール、ベトナムが事務レベルで支持しているとされています。


私の見る限り、残りの国々についても例えばアメリカに関しては本日の読売新聞のトップ記事にもありますように政府間の事前協議で大筋合意となり米議会での審議を経て参加が認められる公算が高まりました。オーストラリアとの交渉も進んでいますし、カナダは日本とのEPA交渉を進め始めた中、比較的相互補完関係の国ですから私は楽観視しています。ニュージーランドも同様だと見てます。

とすれば、少なくとも交渉テーブルには入れてもらえる可能性は高いのではないでしょうか? そしていったんそこに入れば日本がこの国々たちと喧嘩をする積極的理由はひとつもないのであるし、それこそ、「和」を大切にする日本ですから、まさか、椅子を蹴って会議場から出てくるという恥ずかしい真似をするとは思っていません。

では、日本を含むTPPが数年後に発効するとしましょう。域内の経済や貿易は飛躍的に発展するかもしれません。但し、各国の弱い分野が強くなることはあるのでしょうか?

いまさらリカードの比較優位説をもってくるのもどうかと思いますが、ここで再考する意味はあるかもしれません。

「リカードによって提唱された外国貿易および国際分業に関する基礎理論。一国における各商品の生産費の比を他国のそれと比較し、優位の商品を輸出して劣位の商品を輸入すれば双方が利益を得て国際分業が行われるという説。」(Kotobankより)

これは考え方によっては強いものをより強く、というスタイルであり、その国家の特徴を引き伸ばす形を取るのではないでしょうか?

EUをひとつの例として考えるとドイツの工業製品は更に強くなり、南ヨーロッパ各国の産業構造が変わったということはありません。とすればTPPにより各国の産業構造の色はよりはっきり濃くなるというのが私の予想です。

また、ブロック化により域内の関係がより強固になる可能性はあります。なぜなら、加盟国はさまざまな有利な条件のもと貿易を行うことが出来ますが、非加盟国はそのハンディを背負わなくてはいけません。しかもTPP交渉参加国を見ると日本、アメリカのような工業先進国、カナダ、オーストラリアのような資源大国、さらに東南アジアの今後を担う工業生産国、アメリカやオーストラリア、カナダのような大きな国土を持つ国家の圧倒的な大規模農業生産というようにあらゆる方面での強みが網羅されているのです。

とすれば以前にも申し上げましたように欧州、アジア、アメリカという三つの大きなブロックの中でそれぞれのブロックが地域経済同盟をコアとしてその交流の拡大化を進めながら非地域同盟国家とは個別提携(EPA,FTA)を地球規模で進めるという構図になりそうです。更にはブロックが各地域で複数存在することも増えてくるでしょう。

ある意味、世界の国々がSNSでお仲間を作るのと同じような状況と化しているともいえます。故に仲間はずれはダメージが大きいともいえるのです。

一般的にはブロック化経済は悪とされています。かつてそれで苦しんだこともあります。ですが、その時の教訓を生かし、今、新たに進むであろうブロック化に対して英知を持って対応することが必要になりそうです。例えば日本の農業を先端技術の塊として捉えるという発想の転換もありではないでしょうか?

もしかしたら10年後の我々の生活は大きく変わっているかもしれません。その変化に無理に抵抗するのではなく、うまく波乗りのように乗っかっていく要領のよさが必要ではないでしょうか? 日本には固定概念で凝り固まった方は多いと思います。私もある面においては頑固であります。しかし、私を含め柔軟になることが今後を生きるためには重要なのかもしれませんね。

今日はこのぐらいにしておきましょうか?


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年4月10日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。