知られざる23区競馬組合の公金運用の実態 --- 岡 高志

アゴラ

東京にはいくつか公営ギャンブルがあります。

ここで紹介するのは、大井にあります大井競馬場。運営は東京23区が出資する特別区競馬組合がにないます。

ご多分にもれず、ここ数年は競馬事業単体では赤字続きですが、23区へは配当を出しています。過去の利益剰余金から配当を捻出している状態です。


その利益剰余金のうち約100億円が外債で運用されています。いわゆる為替デリバティブを用いた仕組債と言われるものです。発行体の信用格付けは高く、債務不履行の可能性は低いですが、価格、利回りは、為替に影響を受けるものです。

過去にも、早稲田大学の年金基金が、仕組債で多額の含み損を負ったと2008年ごろ話題になりましたし、兵庫県朝来市では、仕組債の元本が67億円で時価評価51億円、16億円もの評価損が発生していたと2009年に国会で指摘されています。

また、特別区競馬組合の保有する仕組債は全て満期30年!超長期の為替変動をだれが予想することができるのでしょう。まさに、ギャンブル。

自民党政権の与謝野馨財務大臣兼金融担当大臣も、前述の朝来市のケースで、「30年物に投資をする、しかも換金可能性が著しく低いということが書かれているにもかかわらず投資したということは、この市長様の判断は適切なものとはとても思えない」と、発言されています。

2005年のペイオフ本格解禁以降、公金運用先の分散の動きが大きく、証券商品に流入した経緯があります。銀行の倒産リスクという小さなリスク回避のために、為替変動リスクを抱えてしまったわけです。

「倒産リスクの低い格付けの高い発行体の債券ですから安全です。」といった証券営業マンのセールストークにのって、いとも簡単に公金運用のアロケーションを変更してしまっています。特別区競馬組合のケースですと、わずか2年ほどの間に、つぎつぎに仕組債を購入して、約100億円もの額面を保有するに至ります。その後の、円高局面で明らかに評価額が下がっていく中で、担当者はどんな思いでいたのでしょうか。

自治体の公金運用担当者は、人事ローテーションでたまたまそこにいただけで、証券運用の知識など素人レベルです。証券営業マンとは情報格差が開きすぎなのです。

さて、特別区競馬組合は、ギャンブルの運営者ではあるけれど、資金運用についてはノウハウ、情報ツール、そして人材もいない。余剰資金があるからといって大きく運用しようと爪を伸ばす必要はないでしょう。

東京23区民の大切な資金ですから、このような仕組債は遠い先の満期を待たずに資金化して区民へ返還するべきでしょうね。もちろん、中途解約により含み損が実現する可能性があります。


岡 高志
大田区議会議員
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