ゴルフ会員権は本当に高騰するのか? --- 岡本 裕明

アゴラ

ゴルフ会員権の相場に変化が見られます。関東地区の平均取引額は昨年の12月に135万円をつけたあと回復基調をたどり、4月には163万円まで上昇しています。単純計算でも20%以上の上昇となります。ゴルフ会員権は2007年初頭に直近のピークを打ち、そこから半値以下まで下がっていたもので底打ちの感が出てきました。


もともとはバブルの頃はサラリーマンならばゴルフは必須科目といわれるほどのブームで、週末の練習場は長蛇の列。その上、都心ならばたかが練習場で5000円以上もかかることに何か矛盾を感じていた人も多いと思います。次から次にゴルフ場が造成され、会員権販売はバブルの象徴でもありました。

実は私は1986年頃に千葉県の成田ゴルフ倶楽部の造成工事に携わっていました。自社開発物件としてクラブハウスとあわせ総額100億円近くかけたまさに豪華絢爛なゴルフ場でした。当時、名前の付け方に関してクラブ、倶楽部、コース…などの中でどれが品格があるかなどを調査させられたのを覚えています。川田太三氏の設計にマッシー倉本や岡本綾子氏がコース設計を確認する試打に来られ我々はピリピリしていたものです。

完成したコースは法人会員が一次募集8000万円で日経新聞に新規販売としては当時の日本最高額であると報じられました。理事に名を連ねた社長、会長は当時の日本を代表する企業ばかりであり、私はその後も業務でずいぶんこのゴルフ場に世話になりました。

バブル崩壊後、コース運営者が変わったこともあり、ゴルフ場会員価格は現時点で売り90万円、買い70万円という二桁違う数字がついています。そう考えると会員権購入者はとてつもない損失を負ったということでしょう。まさしくバブルは泡の如し、であります。

今、株価の上昇と共にゴルフ会員権相場が上昇しているのは割と説明がつきやすいと思います。ゴルフをする層は比較的金銭的余裕があり、株式などを通じて余裕資金が出来てきたため、手ごろな金額のゴルフ会員権に目をつけた、ということかと思います。

不動産の仕事を長くやっていて確実にいえることは高額所得者が行動を起こし始めるとリゾート物件に大幅な値上がりが見られるということです。これはもともと品薄なところに需要が高まるため、売買金額だけが一人歩きするものでいわゆる新興市場の流通株数の少ない銘柄の株価が跳ね上がるのと同じ原理です。ゴルフ会員権もほぼ同じ動きが見られるとみてよいかと思います。

日経によるとそうは言っても名門、高級コースの価格は上昇すれど、一般的コースの動きは少ないと解説されています。つまり、まだ動き始めということかと思います。株価が更に上昇を続ければ全面的な価格上昇の可能性もあります。ただし、ゴルフに関してはゴルフ人口そのものは800万人台程度であり長く漸減傾向が続いています。理由はゴルフ人口の平均年齢の上昇、長いデフレ、飲酒運転の強化など複合的理由ではないでしょうか?

それを考慮すればゴルフはまずはウェアと道具から、コースに乗り付ける車にも気を遣う、などという華やかな時はやはり遠いということでしょう。成熟ニッポンではゴルフは娯楽のひとつというのが答えのようですね。

成田空港に着陸する直前に見える成田ゴルフ倶楽部のその復活の日も遠いのかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年5月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。