料理の写真撮影禁止のお店には、どんな思惑があるのだろうか? --- 内藤 忍

アゴラ

昨日は母の日ということで、母と弟そして甥っ子と私の4人で中華を食べに出かけました。義理の妹が予約してくれたお店なのですが、姪っ子が熱を出してしまいお留守番。とても良いお店だったので残念でした。

お店は京王線の駅から歩いて数分のところにあるのですが、住宅地のど真ん中のような場所で、とても飲食店経営が成り立つとは思えない立地条件です。しかも小さな看板があるだけで、地元の人でも気が付かないで通り過ぎてしまうような地味な外観。


しかし、店内は予約で一杯。満席です。そして料理も絶品でした。中華と言うとこってりとした脂っこいイメージがありますが、繊細で見た目も美しく、様々な種類の野菜が一皿一皿に上手に組み込まれていて、見た目も味わいも楽しめました。

聞けば、野菜を使った中華料理の本を出している、鉄人女性シェフが独立したお店でした。

このお店には不思議なことが1つありました。それは料理の写真撮影が禁止になっていたことです。思わず、撮影したくなるような美しい料理ばかりだったので、とても残念でしたが、ルールですから我慢しました。

しかし、なぜお店は写真撮影を禁止にしたのでしょうか?

料理の盛り付けや材料がライバル店に知られるのが嫌だから? でも、こっそり食べに来れば簡単にわかってしまいます。それにレシピ本を出しているくらいですから、そもそも秘密主義のお店ではありません。

お店の雰囲気が乱れるから? でも、厳かなフレンチやカウンターで食べるお寿司とは違って、比較的カジュアルな雰囲気で、携帯で写真撮影をしても誰も気にしないような感じでした。

それとも写真を撮っているうちに料理が冷めてしまうのが嫌なのでしょうか? しかし、おしゃべりに夢中になっているグループもたくさんいましたから、そのためだけに写真を禁止するのもわかりません。

ネット上で写真をアップする人が増えてから、飲食店の集客手法は大きく変わりました。テレビや雑誌で取材を受ける以上に、グルメサイトの「食べログ」で高い評価を受け、ブログでたくさんの人に写真入りでお店の紹介をしてもらうのが、長期的な集客に効果があるのです。

写真を禁止しているということは、その集客ルートを自ら狭めていることになります。逆に言えば、ネットでブログで紹介してもらわなくても、問題なく集客できているのかもしれません。

常連を中心に地元で経営している小さなお店は、テレビの取材や有名ブロガーに取り上げられることで、客層が変わってしまうことがあります。しかし、そんなブームで一時的にお店が繁盛しても結局飽きられてしまい、その間に常連さんも離れていってしまっては逆効果です。

写真撮影禁止にしているのは、今の経営スタイルをずっと守っていきたいと思っているからなのかもしれない。アットホームな接客と丁寧に作られた料理を味わっているうちに、そんな気がしてきました。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年5月13日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。