この数日の株式市場を数字だけ追っていけばギャンブルそのものに写りますが、見方を変えると日本市場の特徴を嗅ぎ取ることも出来るのではないでしょうか? 今日は視点を少しずらした日本の株式市場をみてみましょう。
新興市場の動きに変化が見えたのは2週間ぐらい前からでしょうか? 一部の先駆した人気銘柄に反落するものが多くなり、バイオ、ゲーム関連など株価が短期間で数倍まで上がっていた銘柄もことごとく売り崩されました。その理由は海外勢の売り主導ともいわれています。理論価格を大幅に超えたものは熱狂とバブル以外の何者でもないというのは投資の世界にいる人ならばよくわかっているのですが、残念ながら日本市場でのその事実は今の40歳台の方でもわずかしか知らないのかもしれません。
次にアメリカのバーナンキFRB議長の発言について金融緩和終焉のタイミングについてその発言の意図するところにさまざまな思惑が入り混じり、株価は大きく揺れました。その間、東京市場はそれでも指数的には上昇をするものの個別銘柄をみると思ったほど上がっていないことに気がつき始めた人は多かったと思います。
そして最後の売り崩しは中国のHSBC購買者指数が想定より相当悪かったことでまるでレバレッジが利いたような1100円を越す大幅下落となりました。
これらはすべて海外からの要因であり、国内発の原因ではないことに注目したいと思います。
ではなぜ日本は海外に弱いのか、といえばまず、市場の主流は海外からの資金であって市場の判断力は国際基準が中心であるとしたらどうでしょうか? つまり、我々が考えるアベノミクスや日銀の金融緩和に対する評価と海外勢の評価や価値基準に温度差があり、その結果、日本国内のお祭り的盛り上がりと裏腹に昨日のような崩落が起こりえるのではないでしょうか?
結果として個人を中心に投売りが殺到、松井証券の信用取引の買い方は遂にマイナス5%を超えてしまったのです。事実、一部の個人好みの新興市場の銘柄はわずか2週間程度で5割から半値程度まで下げているものが目立ち始めています。デフレ時の株式市場でもここまでワイルドな下げ方はしません。まさに山高ければ谷深し、ということでしょうか?
日本人論のひとつに日本人を羊の群れに例えることがあります。皆、同じ方向にいく、という意味なのですが、今回の株式市場はまさにあの山に登れという羊飼いの指示に一気に上ったらそこに崖があって落っこちた、ともいえる状況なのです。
では、どうすればよいのか、といえば自己判断能力を高めるしかないと思います。たとえば、バーナンキ議長の発言をどう解釈するのか、といえば私なら状況をみて多少フレキシビリティをもたせるという意味に取っています。つまり、失業率が6.5%まで下がらなくてもほかの経済指標などを参照にしながら最適判断を下すということです。それが今日明日の金融緩和解除になるかどうかはバーナンキ議長にもわからないはずです。経済は市場に聞かないとわかりません。私は個人的にはそれほど近いうちには金融緩和解除はないだろうとみています。
中国のPMIもいつものように悪かっただけです。そして、もともと中国は経済が軋んでいるのですからそれに振り回されないよう企業も対策を取りつつあるところが増えています。中国の最悪期はまだこの先に待っていると見た方がよいのですからそれを個人投資家を含む市場参加者は早く消化すべきだったのです。
今回の調整はいずれにせよ、スピード調整として適度かと思います。あまり早合点しないで落ち着くことが重要かと思います。経済の実態はひたひたとついてきていますからタイムラグを見た方がよいかもしれませんね。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年5月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。