慰安婦問題を打開する鍵は日米外交にある

池田 信夫

きのうはテレビ大阪で慰安婦問題の討論に出演し、きょうは5時からニコ生で「言論アリーナ」という新番組をスタートするが、そのテーマも日韓問題を元国務省日本部長のケビン・メア氏などと討論する。正直いって私もこの話題にはうんざりだが、いい加減にこの不毛な問題がいつまでも蒸し返されて日韓関係の障害になる状況にケリをつけたい。


アメリカ政府はこの問題を靖国神社や南京事件などと一くくりにして、日本の「歴史修正主義」を警戒しているようだ。以前にもメア氏は「強制連行と人身売買の区別なんてどうでもいい。日本が戦争を反省していないことが問題だ」といっていたが、これは誤解である。安倍首相のスタンスは日本の「右派」の中でも最も穏健なほうだし、慰安婦問題はそういう「右傾化」とは無関係な歴史的事実の問題である。

日本政府は「慰安所の設置、経営・監督、衛生管理、身分証明書等の発給等につき、政府の関与があった」ことは、1992年に加藤紘一官房長官が認め、「お詫びと反省の気持ち」を表明した。ところが韓国政府がそれに納得せず、「強制性を認めろ」と要求してきたため、河野談話で「官憲等が直接これに加担した」という表現をした。これを韓国ロビーがsex slaveという表現で世界に宣伝したことが混乱の原因になったのだ(*)。

NYタイムズの田渕記者も、いまだに橋下徹氏が”sexual slavery was a necessary evil”と発言したと書いている。彼は「性奴隷」という曖昧な言葉は誤解をまねくのでやめるべきだといったのだから、これこそ彼がNYタイムズに抗議すべき明白な誤報である。

朴大統領を含めて韓国政府もこの問題が日韓関係の障害になっていることは知っているが、へたに「親日的」な態度を見せると国民に反発を買うので、日本が韓国を説得するのは困難である。まずアメリカ政府が事実関係を理解し、歴史的に存在しない「日本軍の性奴隷」などという宣伝をやめるよう韓国を説得してほしい。

(*)石原信雄官房長官によれば、韓国政府が「強制性を認めれば政治決着する」という取引を持ちかけてきたため、宮沢首相の判断で「官憲の加担」という表現を入れたという。これは具体的には、インドネシアのスマラン事件(白馬事件)のことで、関係者は軍紀違反として処罰された。この点を「明確化」することも一つの解決策だろう。