チェコで戦後最大の政府与党関係者の腐敗、職権乱用スキャンダル事件が表面化し、ネチャス政権は大揺れだ。野党側が来週にも議会に提出予定の内閣不信任案が可決される可能性が高まってきた。
▲隣国チェコの政治スキャンダルを報道するオーストリア日刊紙プレッセ(2013年6月15日、撮影)
腐敗対策特別警察部隊(UOOZ)は13日、チェコ全土で政府関係者の事務所、自宅を捜査、大量の証拠物件を押収する一方、数キロの金塊、巨額の現金も見つけた。今回の大捜査で拘束された政治関係者は7人になる。
ぺトル・ネチャス首相の愛人といわれる内閣事務責任者(内閣官房長官)のヤナ・ナギョヴァ女史も買収容疑などで拘束された。女史は元軍情報機関責任者に首相の夫人の身元調査を依頼した疑い(職権乱用)ももたれている。
ネチャス首相は与党内の幹部党員を説得する為に高給ポストを提供するなど買収工作をしていた。首相は「正常な政治取引にすぎず、犯罪行為ではない」と弁明している。同首相は14日段階で野党側の辞任要求を拒否している。
与党関係者の腐敗問題で政権のイメージが悪化した為、政府はロベルト・シュラハタ氏をUOOZ長官に任命して腐敗対策に乗り出す姿勢を国民にアピールしてきたが、今回の大捜査を密かに主導した責任者は皮肉にもシュラハタ警察長官だった。
ネチャス政権は2010年5月に実施された下院選挙で第2党に留まったが、第1党の社会民主党が中道左派政権の発足に失敗。それを受け、ネチャス党首が率いる中道右派の市民民主党、新党「TOP09」、「公共の物」から構成された連立政権が樹立された。その後、与党政権内で人事もあって、改造政権が昨年樹立したばかりだ。上院は野党第1党の社会民主党が議席を伸ばし、上下院で「ねじれ」現象を呈している。
内閣不信任案の見通しは連立政権に参加している「TOP09」の動向次第と予測されているが、ネチャス政権の継続は難しいというのが一般的な受け止め方だ。
オーストリアの日刊紙プレッセによると、チェコのゼマン大統領はクラウス元大統領に暫定政府の樹立を要請するのではないかという。いずれにしても、チェコの政情はポスト・ネチャス政権に移っていく。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年6月16日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。