日本全国には多くの活断層の存在が知られ、大都市の街中にも活断層が走っている箇所も多々ある。
例えば、これまで地震が少ない都市として名前が挙げられていた福岡市においても、2005年3月に「福岡県西方沖地震」が発生し、活断層である警固断層に沿った地区では建物への被害が集中した。震災直後に、著者も被害が大きかった今泉地区に調査に入ったが、警固断層の直上の建物の外壁に亀裂が入ったり、屋根瓦が落ちたりと、被害が大きい。一方で、それから少しでもずれると、それほど被害は大きくなく、活断層上の地盤は揺れを助長していることを実感した記憶がある。
そうしたなかで、昨年12月、徳島県では、県北部を東西に通る中央構造線活断層帯の直下型地震で被害が出る恐れがある区域を定め、多数の人が集まる施設の建築を規制する条例を制定し、先月、長さ60kmにわたるこの活断層帯を挟む各20m(全幅40m)について、公共施設やホテル・商業施設・共同住宅等の特定建築物の建築を制限する区域を公表した。
減災対策として考えたとき、活断層付近の建築を制限することは一定程度の効果は期待できる。予め市民にその区域を公表し、注意喚起するという意味においても意義はあるだろう。
ただし、そのような制限の網にかかるのは、上述の特定建築物の、しかもその新築工事についてのみで、既存建築物やあるいは戸建て住宅に対しては対象外となっている点で、実効性に限界があろう。
日本の都市計画や建築行政に限らず、政府・行政は私有財産権に対しては及び腰だ。大多数の人命や財産を守るという公共の福祉の観点から、上の事例は、まさに強権を発令してでもその区域の土地を収容するだけの合理的な理由はある、と思われる。
そして、収容するだけではなく、道路や公園など公共性と都市景観に資する都市計画施設の整備を推進するなど、検討することも必要だろう。平時はその都市のランドマークとなり、非常時は避難場所として機能する。
今回の徳島県の条例は、県単位で制定され、また建築制限まで課している点で一歩前進と言える。先の福岡市や阪神大震災の教訓を得た尼崎市などでも条例を定めている。が、収容やその利用法などにももう少し踏み込んだ議論が必要であろう。
佐嘉田 英樹
都市・経済政策研究所 所長