独週刊誌シュピーゲル6月3日号には、3D(3次元)印刷機を利用してプラスチック製銃を製造した米テキサスの学生の話が掲載されていた。PCに3D設計図を書き、それを3D印刷機に接続し、樹脂やプラスチックの塊を流し込むと、設計図の対象が作られる。銃狂の学生(Cody Wilson)はその3Dプリンターを利用して銃を制作し、試射にも成功した。
▲プラスチック製の銃を試射する米学生(独週刊誌シュピーゲル誌から)
学生は設計図をネット上に公開したので、数時間で全世界にその情報が流れた。これを知った米国内安全問題担当官は警告を発し、テロ担当者は学生の発明が如何に危険かを指摘した文書を作成した。同時に、「この種の銃の製造を阻止することはほぼ不可能だ」と認めている。
ちなみに、警察当局は学生の設計図に基づいて銃を製造してみた。27時間で全部品を製造し、1分で組み立てが出来たという。警察側は「プラスチック製銃は人を殺すことが出来る。近い将来、この種の銃を使用した事件に遭遇するだろう」と述べている。
銃を購入するのではないからライセンスはいらない。自宅で製造するのだから、コントロールはできない。銃がほしければ、3Dプリンター、PC、プラスチックの塊があれば製造できる。
オバマ米大統領は今年2月、3Dプリンターの登場を受け、「これは産業革命をもたらす潜在的な発明だ」と高く評価した。2次元の内容が3Dプリンターを通じて実物化するからだ。しかし、その3Dプリンターで誰でも自宅で銃が製造できる危険性も出てきたのだ。
プラスチック製の銃の場合、空港の金属探知機はキャッチできない。実際、英日刊紙デイリー・メール紙のジャーナリストが米学生の情報に基づいて銃を製造し、英仏海峡トンネルを走る国際列車「ユーロスター」に持ち込んで実験したが、「金属探知機は探知できなかった」という。
3Dプリンターはまだ高価だが、家庭用小型3Dプリンターも売り出され始めた。試作ができるから、2Dプリンターでは不可能だった商品の感触が一層リアルに感じることができる。3Dプリンターの登場は、建築家などに大きな恩恵を与える一方、テロリストたちにも大歓迎されることは間違いないだろう。
如何なる発明もそれを利用する人間によって、プラスにもマイナスにもなる。人を助ける事も殺傷することもできる。3Dプリンターの場合も例外ではないわけだ。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年6月12日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。