中国では今、シャドーバンキングと称する問題が生じています。中国のインターネット経済用語集(日本語版)の解説には次のように説明されています。
「通常の銀行ではない金融機関が行う金融仲介業務を指す。中国で通常の銀行システム外で行われる金融仲介業務には、銀行と信託会社の協力による資産運用、地下銀行、企業への少額融資、質店、民間の金融業務、私募債への投資、リスクヘッジファンドといった通常の銀行でない金融機関が行う資金貸出業務が含まれる」とあります。
なぜ、このような事態が起きるかといえば銀行から借りられない企業がそれらノンバンクや迂回融資で資金調達することで貸し手は高額の利回りを得、借り手はそれでも資金調達できるというシナリオであります。現在、特に問題になっているのが中国の地方の不動産開発に回っている資金ではないかと見られています。結果として金融機関の健全性を図るのが難しくなり、中国の中央銀行である中国人民銀行が銀行間の資金融通を締め付けていることがこの問題の端であります。
人民銀行の締め付けを受け、銀行間の短期金利は10%を超え、CDS(クレジットディフォルトスワップ)市場での利回りも急上昇しています。更にこの影響は中国の株式市場に大きな下落を引き起こし、月曜日には上海市場は5.3%の下落となりました。結果としてこれが海外市場にも影響を及ぼし始め、東京の月曜日は朝方の180円以上高い日経平均も終値は上海に引っ張られ、マイナス160円を超えました。ニューヨーク市場も中国の先行き不安が台頭し、ダウは朝方200ドルを超える値下がりとなりました。
ノンバンクの問題は日本でも80年代バブルの頃の過剰融資の影の主役とされ、結果として日本の金融システの崩壊に繋がりました。私も経験があるのですが、金融機関は貸出債権の劣化を恐れ、金融機関と関連の深いノンバンクやリース会社を解して巨額のグレーな資金を不動産開発会社や建設会社に融資していたのです。特に建設会社に融資するスキームですが、取引先不動産開発会社の開発資金の調達を助け、結果としてその開発工事受注を目指します。そのため、建設会社はノンバンクのローンに債務保証や保証の予約、更には登記留保などの細工を駆使するのです。多分ですが、今、中国で同じようなことが起きているのだろうと思います。
また、不動産以外への理財商品への資金の流入というのもあるのでしょう。
結果としてどうなったかといえば日本ではリース会社は倒産ないし清算され、建設会社も倒産し、不動産開発会社はこっぱ微塵になりました。
フィナンシャルタイムズはこの引き締めについて習近平氏の思想を引き継いでいるのではないかと見ています。つまり、習氏は毛沢東時代のように質素な生活を求めており、不動産開発で儲けたりその賄賂で快楽を追求する共産党員に戒めをしたいと考えており、中国人民銀行はその意図に添ってどれだけ短期金利が上がろうともそれを緩めないという姿勢を見せているのかもしれません。
中国人民銀行がもしも日本の不動産バブルの流れを研究しているとすれば同じ轍を踏まないためにもここはシャドーバンキングの撲滅に全力をあげなくてはいけないでしょう。バブルはフロスの状態で潰すのが一番です。がそれを目指したアラン・グリーンスパン氏は失敗しアメリカの不動産バブルは崩壊しました。
中国ではそのコントロールはうまく出来るのでしょうか? 私は引き締め方法があまりにえげつないと中国バブルの崩壊がより早まる結果を生むと思っています。バブル崩壊はわずかのきっかけで連鎖反応をすることで生じます。中国の場合、どこからそのきっかけが生まれるかわからないほどリスクが顕在化していると見られますのでちょっとした無理が取り戻せない問題発生を引き起こしやすい状態になっているといえましょう。
しばらくは目が離せない状態になるかもしれませんね。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年6月25日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。