週末に宮城の気仙沼に行った時に、お昼をご馳走になったのが、斉吉商店さんでした。参加者全員が大満足の新鮮な魚貝を使った食べきれないほどのお料理を作って頂き、その後でお話を伺ったのが、斉吉商店の3代目おかみの斉藤和枝さん。彼女が書いた『おかみのさんま 気仙沼を生き抜く魚問屋3代目・斉藤和枝の記録』を、東京に帰ってきてから読みました。
お邪魔した時に頂いたお食事が最高だったからというのもありますが、斉吉商店の社員の方全員が、ずっとニコニコしていて、本当に楽しそうに仕事をしているのを見て、何かを感じたからです。メンバー全員のチームワークも良く、本当に仲良くやっているんだな、とこちらもうれしくなってしまいました。
震災でお店や自宅が全壊してしまい、ゼロからのスタートになったのに、そんな悲しさや苦労を微塵も感じさせない明るさ。もちろん、本当は辛いこともあるのかもしれません。でも、東京から出かけて行ったメンバーは、斉吉商店の一生懸命に前向きに明るく働く人たちの姿から多くのことを学ばせてもらったと思っています。
その斉藤和枝さんに、講演をお願いしてお話していただいたのですが、お話を聞いているうちに自分に何が足りないのかが見えてきました。
この本を読むと、震災の時の気仙沼の様子、そしてその後の復興の厳しいみちのりが克明に記されていて、その場にいたこともない私でもつい涙ぐんでしまいます。しかし、和枝さんは、いつも明るく周囲の人を元気にしている。その理由を聞かれて、こう答えています。
「『タテ』になって動いているから」
つまり、何があってもすっくと起き上って、背筋をシャンとして、動きまわる。
どうしたらいいかわからないピンチに見舞われた時、人間誰しもうずくまリたい気持ちになるもの。そこで自分に喝を入れて動く。「うずくまっていても何も変わらないじゃない!」と自分に言い聞かせるのだそうです。勇気のいることですが、行動してみることで自分を変えていくのです。
動くと見える情景が変わってくる。そうしたら出会える人も増えてくる。そこから解決法がいろいろと見えてくる。人間動けるうちは横になったら勿体ない。タテになることで毎日が楽しくなるのだと言います。
そしてもう1つ心がけていることとして「いいこと探し」があるそうです。誰にでも色々と辛いことがあると思いますが、和枝さんは同じ状況を少しでもいいように捉えるようにしている。どうせ同じことが起こっているのだから、楽しんだ方が得という考え方です。
どんな時でも前を向いて、一生懸命全力で物事にぶつかっていく。そんな斉吉商店が作った最高傑作が秘伝の返しダレで煮込んだ「金のさんま」です。今や伊勢丹や三越でも定期的に販売フェアが実施されるほどの人気商品。
週末に気仙沼で買ってきた「金のさんま」を今晩食べてみようと思います。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年7月4日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。