雑誌の編集者の方や書籍の編集担当者の方とお仕事をする機会がよくあります。Webではなく紙で作られるコンテンツの場合、修正が効きませんから原稿のチェックを事前に繰りかえすことになります。
初校、再校、念校というように、何回か修正したものをPDFファイルに打ち出し、それに赤を入れて修正するやり取りを行うのです。
雑誌も本もスケジュールは基本的にとてもタイトです。
例えば、昨日原稿をほぼ入稿した単行本は、書店に並ぶのが8月上旬。これから1か月でテキストを修正し、図表を作成し、装丁や帯と言われるカバーに付ける紙などのデザインを進めていかなければなりません。デザイン関係は著者ではなく編集者の役割ですが、編集者はさらに印刷部数を社内で決めたり、定価の設定をしたりとやることはたくさんあります。
ギリギリになってくるとお互い殺気立ってくるシチュエーションもあったりします。例えば、最終原稿を確認した後で、もう一度見直したら修正したい点が見つかったりする場合。編集者は印刷をスタートしてしまっていたりすると、そこからさらに訂正を反映するのは、かなりの負荷になります。
しかし、そんな極限状態になると、編集者のプロフェッショナリズムが見えてきます。
以前、お仕事をご一緒した編集者の方に締切ギリギリになって、私のほうから大量の修正依頼をお願いしたことがあります。徹夜作業になってしまうようなタイミングだったのですが、こちらの依頼に対して
「内藤さん、修正点の指摘、ありがとうございます。ギリギリまで粘って、良い本にしましょう」
と、気持ちよく対応をしてくれました。締切ギリギリになって、追加で仕事を依頼されるのは、正直うれしいことではありません。マラソンで言えば、ようやくゴールが見えてきたと思ったら、もう一周トラックを走れと言われるようなものです。でも、そんな辛い状況よりも、本のクオリティが良くなることのほうが重要だという想いが、その言葉から伝わってきました。
やっつけ仕事でやっているのではなく、書籍の編集者としての仕事を心から愛している。職人気質のプロフェッショナルだと感動しました。書籍や雑誌の制作をしていて、締め切りが近くなるといつも思い出す話です。
良いものを作るということを最優先して、最後まであきらめないで最大限の努力をする。仕事をしていく上で、忘れてはいけないことだと思います。
極限状態になると、その人の仕事に対するスタンスが見えてくる。仕事に限らず、極限になると人間の本質が見えるものです。
とは言え、そんな職人気質に甘えてばかりはいられません。仕事は出来るだけ負荷をかけないように進めるのが礼儀です。今回は、そんなギリギリ修正はしないように、前倒しで制作を進めたいと思います。
現在進行中の本は、8月に店頭に並ぶ予定の「貯金が1000万円になったら資産運用を考えなさい」(ディスカヴァー21)。魂を込めて職人気質の編集者と制作しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします!
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年7月11日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。